159. 言い争い ページ9
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重苦しい空気。降谷さんから話しかけることは無さそうだ。
かといって、私も何を言ったらいいのか分からない。
…いや、甘えるのもここまでにしなよ椿A。言え、言えよアホ。何黙ってんだ。私が降谷さんに話があるって言ったんだから切り出すのも私に決まってるでしょおバカ。話せ。話せ!
ギュッと拳を握り締める。
よし、言おう。言える、今なら言える。
「降谷さん、あの…話が、あって」
リアクションも何も無い。
手汗を握った。
「…私、警察官を辞めます」
言い終わるのと同時に溢れ出る緊張感。
鼓動が低く早く鳴っている。降谷さんに聞こえてるんじゃないかというくらい体の中で響いている。
降谷さんの顔が、見れない。
…どんな顔してる? 驚き? 呆れ?
どれでもいい。どれでもいいから。私が望むのはただひとつ。
辞めることを理解して、上に通してほしい。
それだけでいいんだ。
「……自分が、何を言ってるのか分かってるのか?」
「…分かってます。その上で私は降谷さんに協力してもらいたいんです」
そしてまた流れる沈黙。
必要なことはもう伝えた。
理由を…聞かれなければ、私が話すことはもうない。
二重スパイだと言わなくていい。
私はまだ、降谷さんの顔を見れないでいた。
「── 断る」
背中が一気に冷えていく感覚。
と同時に、脳裏に先程のコナンくんの言葉が過った。
___ 「簡単に、柊刑事を諦めるなんてことはしないよ」
分かっていた。きっと降谷さんは私の思い通りにしてくれないんだろうなって。
…理由を聞くのは野暮だろう。
でも私も引き下がれない。
この人が私を諦めないなんて知らない。
「降谷さん、お願いします」
「断る、と言っただろう。二度も同じことを言わせるな」
「じゃあ断らないでください!私の望みを聞いてください。警察を、辞めたいんです。その為には上の縛りを解かなきゃいけないんです。降谷さんにはそれが出来るから…」
「公安警察になった以上、辞めることは許されない」
「私はもう公安警察じゃないでしょ!?」
「まだお前は公安警察としての仕事をしてるだろ!」
初めて、降谷さんが声を荒らげた。
この言い争いで、冷静な雰囲気を装ったこの人が。
「── A。お前はどっちだ?」
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かげやま(プロフ) - 歌の柚さん» お返事が1年近く経ってしまい申し訳ございません…!その葛藤を伝えていただきとてもうれしいです;;修正完了しましたのでぜひ読み直していただきたいです!コメント、感想の方ありがとうございました😭🙏 (3月10日 18時) (レス) id: 2b4670edb1 (このIDを非表示/違反報告)
歌の柚(プロフ) - コメント失礼します!完結された後に読んだもんで完結する前に出会いたかった反面イッキ見ができて嬉しいなと思っています!!この作品を読んで何度も泣いてしまって、その度にこの人は感情移入させるのが上手いなと思いました。修正後もまた読み返しに来ようと思います (5月22日 7時) (レス) id: 6a0eef665c (このIDを非表示/違反報告)
かげやま(プロフ) - ななさん» コメントありがとうございますෆ 完結お祝いもありがとうございます!初めて完結まで…!😭とても嬉しいです、こちらこそ読んでくださってありがとうございました❕修正後もぜひ読み返してくれるとうれしいです😳🫣 (5月12日 10時) (レス) @page34 id: 9bf8a638c6 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 完結おめでとうございます。最近コナンにハマって初めて完結まで読んだ作品でした!ボロ泣きでした笑素晴らしい作品をありがとうございます (5月12日 4時) (レス) @page34 id: 15fec6b812 (このIDを非表示/違反報告)
かげやま(プロフ) - ユウリさん» コメントありがとうございます(♡) 泣けました報告とてもうれしいです!完結お祝いありがとうございました💞💞 (2023年4月21日 15時) (レス) id: 9bf8a638c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かげやま | 作成日時:2020年3月24日 13時