176. 夢の中での後悔 ページ26
.
_____ 今思えば、景もまた、椿と同じように嘘をついていた。
故意ではないことは分かっている。
だけど 運命や偶然で表すには憎すぎた。
「降谷さんは、死なないでください」
2人だけになった僕らは神に一体何をした。
目の前で泣きじゃくる彼女の背中に、手を支えることしかできない。
松田、景、班長。立て続けに友人と想い人を亡くした彼女の傍にいれるのは僕だけで、椿も同様。
突然すぎて涙も出ない。
会わなくなった友人を亡くしても、目の前で親友を亡くしても、僕が涙を流すことはない。
そんな僕に椿は問いかけた。
「何で降谷さんは泣かないんですか辛くないんですか!? 萩原さんも松田さんも伊達さんも、諸伏さんの時だって…っ!」
今の彼女に人を気遣える余裕はないのだろう。
完全に八つ当たりだった。
しかしそれに苛つくわけではなかった。
「…僕が、泣いたところで世界は変わらない。アイツらは戻ってこない…」
「…素直に辛いって言えよ冷酷クソ野郎」
弱くなってると思ったらこの女は…!
僕が突っ込んでも、椿はその口を止めなかった。
「松田さんは言ってましたよ。死んだことを忘れたらまた死んでしまうって。萩原さんのことです」
ああ。言いそうだ、松田は友人想いのことだ。
「ねえ、…感情もゼロにする必要はないんですよ、降谷さん。
少なくとも私の前では、そう決まってます」
「………そうか」
なんて理屈のない言葉だろうと思った。
それと同時に、松田みたく励ますように話す椿を見ると、さすが恩師と弟子なだけあるなと感心した。
でも、そうか。そうだよな。
( …だから僕は )
お前のことが好きになった。
そうやって裏も表もない言葉で話すから、いつの間にか僕は素の僕になって話してる。接してる。
素の僕を受け入れてくれたお前が、嬉しかったんだ。
伝えることは、できないけれど。
想うことだけはさせてくれよ。
そう思ってたくせに。
「── 降谷さん、さようなら」
行くな。
行くな、行くな。
僕はまだ、何も言っていない。
___ Aが離れた途端、言わなかったことを後悔する。
.
1077人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かげやま(プロフ) - 歌の柚さん» お返事が1年近く経ってしまい申し訳ございません…!その葛藤を伝えていただきとてもうれしいです;;修正完了しましたのでぜひ読み直していただきたいです!コメント、感想の方ありがとうございました😭🙏 (3月10日 18時) (レス) id: 2b4670edb1 (このIDを非表示/違反報告)
歌の柚(プロフ) - コメント失礼します!完結された後に読んだもんで完結する前に出会いたかった反面イッキ見ができて嬉しいなと思っています!!この作品を読んで何度も泣いてしまって、その度にこの人は感情移入させるのが上手いなと思いました。修正後もまた読み返しに来ようと思います (5月22日 7時) (レス) id: 6a0eef665c (このIDを非表示/違反報告)
かげやま(プロフ) - ななさん» コメントありがとうございますෆ 完結お祝いもありがとうございます!初めて完結まで…!😭とても嬉しいです、こちらこそ読んでくださってありがとうございました❕修正後もぜひ読み返してくれるとうれしいです😳🫣 (5月12日 10時) (レス) @page34 id: 9bf8a638c6 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 完結おめでとうございます。最近コナンにハマって初めて完結まで読んだ作品でした!ボロ泣きでした笑素晴らしい作品をありがとうございます (5月12日 4時) (レス) @page34 id: 15fec6b812 (このIDを非表示/違反報告)
かげやま(プロフ) - ユウリさん» コメントありがとうございます(♡) 泣けました報告とてもうれしいです!完結お祝いありがとうございました💞💞 (2023年4月21日 15時) (レス) id: 9bf8a638c6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かげやま | 作成日時:2020年3月24日 13時