168. 最期までありがとう ページ18
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「その書類、どこにあるの?」
「何でそんなの知りたがる」
「自分のことが書いてある書類は知りたいでしょ」
ニコリと笑う。
全部無意味な会話なのは分かっている。
こんなの時間稼ぎ。
どうせ書類の場所を知ったところで私はそれを見ることはできないだろうから。
( …そろそろかな )
「ねえ、ジン」
____ 別れの話をしよう。
堤防の端へ向かって歩く。
「私…組織を抜けようと思う」
「…いきなり、冗談にもなんねえ。何のつもりだ」
「冗談でも嘘でもない。そのままの意味だよ。私は警察官として生きる」
真顔で口にする裏で、こんな風に話すのはあの日以来か、なんて考える。
ジンが次に言う言葉を予測できる。
てめぇ、自分が何を言ってんのか分かってんのか
「てめぇ、自分が何を言ってんのか分かってんのか」
そう言って、カチャリ…と銃口を向けてくるジン。
うん。分かってた。
だから私はこんなことを口にするんだよ。
思い通りに行きすぎて笑ってしまう。
「…何がおかしい」
「みんなに“ラスティはジンのお気に入り”って言われる度にさ、私はそんなことないと思うんだよね」
「…」
「だってジン、いつも冷たいし恐いし、何考えてるか分からないし。平気で撃ってくる。それのどこがお気に入りなんだろうね?」
会った時から優しくされた覚えはない。
中途半端に使えるから生かされてきたけど、ベル姉みたいに助けてくれたこと…あったかな?
問いたところでジンは 今そんなこと話していないなんて顔をする。
でも最期に聞きたかったんだ。
「…」
「…答えられないならいいよ。本題に入る。
さっき組織の情報を公安に流してきた。これでこの組織も終わりだ」
( …嘘だよ。流してないよ )
「ずっとお世話してくれてありがとう。でも 悪は悪だ」
「……ラスティ、…A。てめぇには失望したぜ」
いよいよ撃たれるだろう。
引き金を引く人差し指が遠目にもスローモーションで見えた。
( ごめん降谷さん、家族は売れないよ )
私はギリギリ海に落ちないところまで下がる。
「ジン、私はジンを愛してたよ」
瞬間、動揺を見せたジンだったが、あっという間に私の胸に弾は撃たれ、後ろに倒れていく。
バシャンと海に落ちて、目を開けた。
最期に見たのがジンでよかった。
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かげやま(プロフ) - 歌の柚さん» お返事が1年近く経ってしまい申し訳ございません…!その葛藤を伝えていただきとてもうれしいです;;修正完了しましたのでぜひ読み直していただきたいです!コメント、感想の方ありがとうございました😭🙏 (3月10日 18時) (レス) id: 2b4670edb1 (このIDを非表示/違反報告)
歌の柚(プロフ) - コメント失礼します!完結された後に読んだもんで完結する前に出会いたかった反面イッキ見ができて嬉しいなと思っています!!この作品を読んで何度も泣いてしまって、その度にこの人は感情移入させるのが上手いなと思いました。修正後もまた読み返しに来ようと思います (5月22日 7時) (レス) id: 6a0eef665c (このIDを非表示/違反報告)
かげやま(プロフ) - ななさん» コメントありがとうございますෆ 完結お祝いもありがとうございます!初めて完結まで…!😭とても嬉しいです、こちらこそ読んでくださってありがとうございました❕修正後もぜひ読み返してくれるとうれしいです😳🫣 (5月12日 10時) (レス) @page34 id: 9bf8a638c6 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 完結おめでとうございます。最近コナンにハマって初めて完結まで読んだ作品でした!ボロ泣きでした笑素晴らしい作品をありがとうございます (5月12日 4時) (レス) @page34 id: 15fec6b812 (このIDを非表示/違反報告)
かげやま(プロフ) - ユウリさん» コメントありがとうございます(♡) 泣けました報告とてもうれしいです!完結お祝いありがとうございました💞💞 (2023年4月21日 15時) (レス) id: 9bf8a638c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かげやま | 作成日時:2020年3月24日 13時