161. 人生と疑問 ページ11
.
私のしゃっくり声が車内に響く。
私の声だけが、響く。
どうにも止められなくて こんなに泣いたのは久々だった。
泣くのはずるいと知っている。だから止まれ。止まれ、涙。
「…いつからだ」
恐る恐る、降谷さんが聞いてきたのが分かった。
…少しは認めたくないって思ってくれてるのかな。
「降谷さんたちと、出逢うずっと前…から──生まれた時からです…」
「そんな前から…」
ハンドルに頭を預けてため息を吐く降谷さん。
私は謝ることしかできなくて。
しつこく感じたのか、「もう謝るな」と言われてしまった。
___ “その時”っていうのは予想以上に重くて苦しい。
覚悟をしているなんて口だけ言っても、実際その時が来ないとできてるか分からなくて、私は結局できていなかった。
“あの頃”に戻りたいなあ。
…戻って、何も考えないで幸せでいたい。
少なくとも私の人生において、5人と一緒に過ごした時間は幸せだったのだ。
「何で、何も言わなかった」
故に、
「── 言おうと思ってた、言いたかった!
言って、スッキリして…素直に罪を認めようって…。
でも…私は…どうしても、あんたたち五人組と生きたかったんです…っ」
「…」
おかしいですよね。何で私たちだったんでしょうか。
こんな簡単に人間は死んでいなくなるものでしょうか。
二重スパイのことを話したら、私のために何かしてくれたであろうあの人たちが死ななければいけない理由は何?
その問いかけに答えるのはいつも自分で。
___ 自分みたいな人間がいるから、死ぬ必要がない人が死ぬ。
簡単な答えなはずなのに私はそれを認めたくない。
認められるはずがなかった。
「…一緒に生きたかった人たちはいなくなっていって、私と降谷さんしかいなくて。…余計、言えなかったんです。
言ったら、降谷さんはきっと離れていくでしょ?」
日本のためになら、ひとりの女を切り捨てることくらい簡単なことだ。
だけど、私はそれが嫌で嫌でたまらなかった。
私をどんな手を使ってでも守ると言ってくれた降谷さんにそんなことをさせたくなかった。
…いや。ただ純粋に、離れてほしくないの。
「…全部、遅いんだ。お前は…仕事も、景に想いを伝えるのも」
ハンドルから頭を離した降谷さんと目が合う。
何かを決めたような目が。
.
1077人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かげやま(プロフ) - 歌の柚さん» お返事が1年近く経ってしまい申し訳ございません…!その葛藤を伝えていただきとてもうれしいです;;修正完了しましたのでぜひ読み直していただきたいです!コメント、感想の方ありがとうございました😭🙏 (3月10日 18時) (レス) id: 2b4670edb1 (このIDを非表示/違反報告)
歌の柚(プロフ) - コメント失礼します!完結された後に読んだもんで完結する前に出会いたかった反面イッキ見ができて嬉しいなと思っています!!この作品を読んで何度も泣いてしまって、その度にこの人は感情移入させるのが上手いなと思いました。修正後もまた読み返しに来ようと思います (5月22日 7時) (レス) id: 6a0eef665c (このIDを非表示/違反報告)
かげやま(プロフ) - ななさん» コメントありがとうございますෆ 完結お祝いもありがとうございます!初めて完結まで…!😭とても嬉しいです、こちらこそ読んでくださってありがとうございました❕修正後もぜひ読み返してくれるとうれしいです😳🫣 (5月12日 10時) (レス) @page34 id: 9bf8a638c6 (このIDを非表示/違反報告)
なな(プロフ) - 完結おめでとうございます。最近コナンにハマって初めて完結まで読んだ作品でした!ボロ泣きでした笑素晴らしい作品をありがとうございます (5月12日 4時) (レス) @page34 id: 15fec6b812 (このIDを非表示/違反報告)
かげやま(プロフ) - ユウリさん» コメントありがとうございます(♡) 泣けました報告とてもうれしいです!完結お祝いありがとうございました💞💞 (2023年4月21日 15時) (レス) id: 9bf8a638c6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かげやま | 作成日時:2020年3月24日 13時