129 昔話 ページ29
.
「え?」と返す眼鏡くんの目を見ようと、動かしていた手を止めた。
「ごめん、君を追いつめたくて言ってる訳じゃなくて…。
最近イライラしてたんだ。せっかくアイドルになりたくて入ったのに、みんな中途半端で…変な目で見てくるしバカにしてくるし。君も、そうだと思って、八つ当たりした。本当にごめん」
言い始めたらスラスラと出てくる言い訳に、自分で笑ってしまいそうだった。何をこんなに弁解しているのか。
だけど彼には謝りたかった。
彼は守りたいものを自分で守ろうとしていたのに。
こんな殴られてでも。
勇気がない俺が罵倒していはずがない。
もう一度謝ると、眼鏡くんははっとして慌てた。
「いっ、いや！そんなに謝らないでくれ！俺がアイドルだということを忘れていたのも事実だったんだ。君が言ってくれなきゃ気づけなかった、ありがとう」
「…うん」
「はは、白神くんは優しいんだな。ドライなのかと思ってたぞ」
「ドライ…? 別に優しくないと思う…」
「こうして手当てしてくれてるのに、優しくないわけないだろう」
眼鏡の奥、慈しむような目で見られて、困った。
そんな目、誰からも向けられたことがないから。
眼鏡くん、…じゃなくて、名前は何て言うんだろう。
日直のところに書いてあった巴という名字が別のヤツだってことは知っていた。
優しい彼の名前が知りたいと、率直に思った。
「ねえ、君の名前聞いてもいい?」
「ああ！まだ言ってなかったよな…これでも同じクラスなんだが」
「あ、ごめん。俺まだクラスの人の名前全員覚えてなくて」
「いや、いい。俺の名前は、」
その瞬間、何かが変わるような気がして。
「守沢千秋だ」
彼の笑顔は優しくて温かくて、まるで太陽だと、思ったんだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 752人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
suzuna(プロフ) - 凄く面白く、一気読みしてしまいました…‼︎更新楽しみにして気長に待っております(*´꒳`*) (1月18日 8時) (
レス) @page35 id: 63b5e8db0f (このIDを非表示/違反報告)
Lim - 凄く面白いです！更新頑張ってください!! (2022年3月20日 21時) (レス) @page32 id: 69ed93d6c8 (このIDを非表示/違反報告)
かげやま(プロフ) - やまはさん» コメントありがとうございます。返信遅くなってしまい申し訳ありません…！😭 更新致しました！これからも気まぐれになりますがしていくので良かったらご覧になってくださると嬉しいです！ (2021年12月12日 22時) (レス) id: d06e41bbdd (このIDを非表示/違反報告)
かげやま(プロフ) - あひる様さん» コメントありがとうございます。返信遅くなってしまい申し訳ありません…！😭 意識して厳しくしていたのでそう言っていただけてとても嬉しいです！これからも更新頑張ります。 (2021年12月12日 22時) (レス) id: d06e41bbdd (このIDを非表示/違反報告)
やまは(プロフ) - すごく面白くて一日で�靴泙覇匹鵑任靴泙い泙靴拭�！これから更新の予定はありますか？続き待ってます…！ (2021年10月19日 17時) (レス) @page27 id: d3221d33a6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：かげやま
| 作成日時：2020年5月29日 0時
