緑の記憶 1 ページ47
「…以上でカンファレンスを終了する。各自持ち場に戻るように。」
教授の言葉で、大勢のスタッフが一斉に動き出す。
俺もその人々に流され、机上に広げた資料を整える。
「よ、調子どう？」
「わっ、かざぽんかぁ〜びっくりしたなあ…。」
背後から声をかけてきたのは、大学時代からの同期である風間くんだった。
「あれ、相葉ちゃんちょっと顔色悪いよ？」
「そう…かな。医者なのにね、しっかりしなきゃなあ。」
医者の不養生って、患者さんに笑われちゃうなあ。
そう笑ったけど、彼の表情は緩まない。
「ちゃんと休みなって…。あと、こんな話の後で悪いんだけど、今夜空いてるやつ飲みだって助教が言ってた。どうする？」
「マジかあ…。ありがとね、行けますって伝えといて。」
「…早めに抜けなよ？って言ってもあの人じゃ厳しいかもしれないけどさぁ…。」
「へーきよ、ありがとう。」
心配そうな顔のまま去っていった風間くんだって、とても健康そうには見えなかった。当たり前か、こんな環境じゃ。
俺は血の滲むような努力の末、医学部に合格して上京した。新しい環境に必死でついていき、卒業後は研修医期間を経て大学の大学病院の整形外科医、骨折した人等の手術をする医者になった。それが７年くらい前。夢と希望に溢れ、この世界が輝いて見えていた。
「俺、何してるんだろう…。」
小さく、溜め息紛れに呟いた言葉に、自分でまた悲しくなる。
患者さんたちと談笑していれば睨まれる。同僚たちは仕事の押し付け合い。自分のキャリアに傷をつけたくない者は、危険度の高い手術には関わらない。助教授はしょっちゅう強制参加の飲み会を開く。
違う、俺はそんなことしたくて医者になったわけじゃないのに。ただ純粋に、人助けをしたかったはずなのに。
小学生の頃に骨折した脚を、治してくれたあの優しい先生のようになりたくて、苦手な勉強もずっと頑張って…
涙が出そうなほど悔しいけど、そんな場所にいてイエスしか言えない意志のない存在になった自分が一番嫌なんだ。
「相葉先生、このあと15:00から…」
「うん、第2で手術ね。わざわざありがとう。」
「はい、よろしくお願いします。」
俺に声をかけた看護婦は、足早に去っていった。
俺も仕事をしなければ。重い足を引きずり、会議室を後にした。
…こんな毎日が一生続くと思っていたのに、この翌日に１つ年下の幼馴染から来た唐突な連絡で、俺の人生は大きく方向を変え始めたのだ。
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橙空(プロフ) - ritsuさん» すみません、返信遅くなりました！コメントありがとうございます(*´-`)楽しみにしていていただけているようで、嬉しいです。これからも更新頑張ります！ (2018年9月22日 8時) (
レス) id: 8618996bea (このIDを非表示/違反報告)
ritsu(プロフ) - はじめまして。いつも楽しみに読ませて貰っています。続き楽しみにしていました！翔くんが皆になんて言うのか、すごく楽しみです＼(^o^)／ (2018年9月11日 17時) (レス) id: 52872926f5 (このIDを非表示/違反報告)
橙空(プロフ) - ちょこさん» リクエストしてくださりありがとうございました！ちょこさんのアイデアのリクエストで、楽しくこの小説を書くことができています！更新が遅いですが、きちんと書ききるつもりなので、頑張ります！ (2018年9月11日 13時) (レス) id: 8618996bea (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 遅れてしまってすみません、あのときリクエストさせていただいたちょこです！リクエストを書いてくださり、本当にありがとうございます！いつも楽しく読ませていただいています。更新頑張ってください、応援してます！ (2018年8月15日 0時) (レス) id: 41ca308e38 (このIDを非表示/違反報告)
橙空(プロフ) - moaiさん» コメントありがとうございます！更新が不安定になってしまっていて申し訳ありません...。頑張ります！ (2018年7月31日 12時) (レス) id: 8618996bea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：橙空 | 作成日時：2018年4月16日 22時
