【夏油傑】怖い先輩 1

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今日の任務は田舎の小さな町で呪霊被害が起き、それを対処するものだった。



軽傷者十数名の治癒およびその原因である2級呪霊の抹消。



なのに、



「……全然話が違うじゃない…」




依頼人の町長に案内され町の中心までいくと、資料に書いてあったものとは全く違っていた。


被害者は100人を超え、殆どが重傷者。

呪霊も1体ではなく2体。それもこの大規模な被害から考えると1級レベルを覚悟して置いた方が良さそうだ。



「すみません、あれから被害が拡大して…なんとかして頂けるんでしょうか…？」



「……はい。もちろんです、なんとかします。その為に来ましたから」






***






それから5時間後。




「…本当に…！本当にありがとうございました…！！」


「いえいえ、死者が出なくて良かったですよ」




私は激戦の末、2体の呪霊を跡形もなく祓い、

被害者も全員の問題なく動ける状態まで治癒した。



「もうこの町は終わりかと思ってました…。本当に感謝してもしきれないです…！！ありがとうございます！！」


「呪霊とは関係ない持病まで治して貰えて…またこうして孫と歩けるようになったこと、心から感謝致します。」


私は満身創痍だったが、町長とその村人に沢山お礼を言われ、気分はとても良かった




満足に歩くことすら出来ない足で車へ向かう。



呪霊と戦った時にかなりの大怪我をした。



右手は骨折し、呪具を握ることすら出来ない、

足もボロボロでひょこひょこ歩くのが精一杯だ。




1級呪霊2体との戦いに、被害者 計128名を一斉治癒。小さな子供のメンタルケアまで行い、呪力はもう全く残っていない。

自分の傷すら治せないほどカラカラだ



「だ、大丈夫ですか？！！Aさん！！！」



酷く疲れた


やっと車まで辿り着き、ボロボロの手でドアを開けそのまま倒れるように車の中に入った。




「…はい、問題ないです。生きてるので…」



「ど、どどどどうしよう…！そんな！Aさん…！！」




「安心してください。藻布さん…大丈夫ですよ、少し休んで呪力が回復したら自分で治せますから、こんな傷」




泣きそうになっている藻布さんを安心させようと頑張って笑顔を作った。



「…うぅ、Aさんの可愛い顔が…血と泥だらけに…ぅ、ﾋｯｸ…」


「全然平気ですってば、泣かないで下さい…私は今とてもいい気分ですよ。人の役に立てたんですから、これは幸せなことなんです…」





私は呪術師だから。





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