【募集企画】東方幻想記録物語8巻 (ページ37)

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即断即決速攻　東風谷早月ページ37

結局のところ、幻想郷に平和な日などないのだ。
甘味処でも寄ろうかなぁと歩いていた人里で聞いたおじさんの訴えに、私はそう実感した。なんでも今、幻想郷では何重もの異変が同時に起こっているらしく、対処で幻想郷の人妖は上へ下への大騒ぎらしい。

「へぇ、そうなの。どうする？虚(うつろ)」

私は隣の友人を見る。時に腐れ縁とも、時に親友とも言うそいつは、いつも不健康そうだし、いつも寝不足でいつも親指を噛んでいる。
私の、ひょっとすれば一番大切な人間。虚・ツヴェターエワは、いつものように焦点の合わない目で笑った。

「谷ちゃん、虚はお団子が、は、早くたっ食べたいです……甘いモノ……甘いモノをっ早く……アあ、ゴメンナサイ！虚が……虚なんかが、あっ甘いモノをねだるなんて……虚はいっつもそうです……へへ……」

虚はいつもこんな調子で、私をなぜか谷ちゃんと呼ぶ。おおかた東風谷の『谷』からとったのだろうが、なぜそこを切り取った。

「はいはい、貴方に甘いモノをねだる権利はあるから。……でもそうね、今日は団子と緑茶の気分だったのに、いきなり異変解決してなんて嫌だわ。じゃあ、こうしましょう」

私はパチンと手を叩き、虚の手を引いて歩き出す。

「虚、今起きてる異変の概ねの場所と数はわかる？」

「エヘヘ……任せてください……虚は悪魔だから、イッパツでわかっちゃいます……ヒヒ、あっちです……」

虚は陰鬱に笑うと、どこか遠くを指差した。

「わかったわ。虚、いつものやるわよ」

「エヘ、いつものでしゅね……ア、噛んじゃいました……ゴメンナサイ、うっ、虚はいつもそうなんです……こんなっ、こんなのっ、さっさと……」

また始まったよ、と私は嘆息する。虚は些細なことで自己嫌悪を始めてしまう。こんなのは日常茶飯事だ。私はいつものように虚をお姫様抱っこすると、重力より少し強い力で跳躍した。
跳び上がると、下の様子がよく見える。下では、鎌を持った人と黒い羽織を着た人、そして禍々しいオーラを纏った人物がドンパチやっていた。あそこか、と私は呟く。

「行くわよ、虚！着地任せた！」

「ガッテンです谷ちゃん！呪符『原初の呪術』！」

私達が着地する直前に、虚はスペルカードで大爆発を起こした。落下の勢いを、爆風で相殺するのだ。私達は傷一つなく安全に着地した。
私達を覆った砂煙が晴れると、四つの瞳が私達を見つめていた。