【募集企画】東方幻想記録物語8巻 (ページ1)

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燦然と輝く顕界＿西行寺魂々葉ページ1

「あー、あほくさあほくさ。やってられっかこんなん」

西行寺魂々葉はドンパチやっている面々の上を悠々と飛び去っていく。冥界への道を辿っているのである。
おいおい、と咎める人間が居るだろうが、そもそも魂々葉はやる気のない霊夢や魔理沙といった面々の代わりに来ていたわけで、これだけ多くの人材が揃ってからは魂々葉の出る幕ではない。その上面倒な奴が異変を延ばしやがるし、魂々葉の豆腐メンタルではこれ以上の耐久は望めまい。最早魂々葉の見せ場は終わっているのである。
―――あーあ。そこそこ楽しかったんだけど。
魂々葉は心の中でぼやく。そういえば久しぶりの顕界だった気がする。もう少し長居しても良かっただろうか。―――否、そういうわけにもいかない。第一、魂々葉は冥界で仕事があるのだ。幽々子の呑気が過ぎる為、魂々葉が幽々子の仕事の半分ばかりを追加で請け負っているのである。実は魂々葉は、山のような仕事を放っぽり出して来ていた。
―――帰ったらまた書類仕事かぁ。
もう日は落ちている。漆黒の空へと飛び込むように、魂々葉は冥界へと帰還していたのだった。

――――――――――――

かつん、と革靴(ローファ)が鳴る。
階段を一段一段上がっていくのも億劫なので、空を飛んでショートカット。気流に乗って、魂々葉のドレスの裾が舞う。最高速度(トップスピード)を記録(マーク)する勢いで上昇を続ける。

「あら、おかえりなさい魂々葉。どう？久々の顕界は」

石段の最上に、見慣れた顔があった。桃色の短い髪に新橋色の着物。段違いな胸元の膨らみに、魂々葉は暗澹たる気分にさせられる。親戚にして腐れ縁、西行寺幽々子である。
久々に見る顔に、魂々葉は少しだけほっとして、

「ええ、とても楽しかったわ。以前とは全然変わらないけれど、そうね―――外来人が居るってだけで、随分変わるものよ」

幽々子に向かって微笑む。あの子が居ないかと顔を動かすと、案の定直ぐに見つかった。半身たる霊と戯れる白髪の少女―――魂魄妖夢だ。魂々葉が妖夢にも微笑むと、妖夢は急いで頭を下げる。常に勤勉に働き、いつも慇懃な妖夢は魂々葉のお気に入りだった。幽々子にも爪の垢を煎じて飲ませたい程である。
ふと魂々葉が振り返ると、空から俯瞰した幻想郷の風景があった。各所で勃発している弾幕合戦の所為で、光り輝く弾幕がきらきらと光っている。
いつも見ていたその風景はまるで、漆黒の天鵞絨(びろうど)で飾られた宝石箱のように見えた。