【募集企画】東方幻想記録物語8巻 (ページ42)

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解呪　早月ページ42

「けほけほ……どうやら着地は出来たみたいね。大丈夫？虚」

「エヘ、ダイジョブですよ谷ちゃん……ア、虚はこんな時まで、たっ谷ちゃんに気を使わせて……もうダメです、う、虚はもう死ぬしか、ありません……」

「大丈夫そうね。……ところで、貴方達は誰かしら？」

私は目の前にいる二人を見た。片方は黒を基調とした格好をした赤い瞳の少女、もう片方は和服を着こなしたクール系の美人だ。

「私は皇被華。で、こっちに居るのが暗覚記さん。あなたは？」

「ごめんなさい、名乗りもせずに聞くのは失礼だったわね。私は東風谷早月。この子は友人の虚よ。よろしく」

私が手を差し出すと、被華はにこっと笑って私の手を握る。記という女性はひんやりと私達を見つめると、最低限の会話しかしたくありませんと言いたげな声色で、私達に言った。

「……お前達、ひょっとしなくても外来人だな？」

「まあそうね。私も虚も、元は外の世界に住んでいたわ。随分前の事だけれど」

「ならば早く立ち去れ。私の視界からすぐに外れなければ、殺す。聞こえているか？早く失せろと言っているんだ」

記が言うと、被華が驚いたように目を見開く。私は咄嗟に虚の目を見た。虚は心ここに在らずな様子で陰鬱に笑っているのであてにはならない。しかし対立する理由なぞは初めからないのも確かである。私の目的は異変さえなんとかすれば完遂されるのだ。
殺される前にさっさと異変の元凶になっている事を打ち消せば良い。私にはそれが出来る。

「わかったわよ。お望み通り立ち去ってあげる。でもその前に一つやっておくコトがあるから、ちょっと待ってて欲しいのだわ」

私は側に倒れている、先程ドンパチやっていたもう片割れの少女に近付いた。

「あー、成る程ね。うん、これなら元凶の方へ辿って行って異変そのものを解呪できそうだわ。よし、行くわよ」

私はふう、と息を吐く。倒れた少女の胸に手を置き、詠唱を始めた。

「現世に奇跡は在らず。其は奇跡に非ず。幽世に夢は在らず。其は夢に非ず。現世に天秤が担い手は在らず。我は天秤の担い手なり。奇跡よ、夢幻よ、天秤の担い手が汝らを原初の姿へ帰そう。神明の名において、我らを、汝らを許さん！」

詠唱を終えて、「っと、こんなもんね」と私は呟く。言葉を失っている二人を放置し、私は虚を抱き上げた。

「とりあえず、この異変の元凶になってるっぽい術式は解除しておいたわ。あ、元凶が誰かとかは私の知った事ではないから気をつけなさいね。じゃあまた。虚、行きましょう」

私は先程と同じように、次の異変の現場へと跳躍した。