【募集企画】東方幻想記録物語7巻 (ページ45)

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犬猿の仲　空夜ページ45

「ふん、随分と無様じゃないか」

空夜の脳内に響いたのは、世界で一番嫌いな声だった。顔も何も見ていないが、誰かなんていうのは明白だ。

「―――ああ、君か。全く、こんな所まで追いかけてくるなんて何を考えているんだい？私が一方的に迷惑なんだけどね、狂花」

空夜は世界一嫌いな人間をちらりと見やった。長く伸ばした髪と肌、服は純白。瞳が唯一血の様に紅く、そこだけが彼女の色彩だった。彼女は白檮山(かしやま)狂花(きょうか)。空夜の終生のライバルにして仇敵であり、世界を常に知ってしまうという宿命を背負った、似た者同士でもある。

「僕だって来たくて来た訳じゃないさ。出来るなら今にも帰りたい。早く来ないと家を焼くと脅されて行かない奴が居る訳がないだろう、空夜」
「無様だねえ」
「君こそだよ」

ふははは、と両者が乾いた笑い声を上げた。空夜が大きく息を吐くと、狂花は手をひらひらと振った。

「そんな事はどうでもいいんだ。僕は君を治して、君と共に異変解決を手伝えと言われただけで、君とくだらない談義をしている場合じゃないんだよ。ほら、もう治しておいたから立て」

狂花は暴走する妖怪に目を細め、「これがあの尊大な連中なんて情けないな」と鼻を鳴らした。

「余計なお世話だね、お子様の癖に。誰だい？そんな事を言ったのは。相当な性悪だね」
「君も知っているだろう…あの性悪賢者だ。それと僕はもう一五になる」
「まだ子供じゃあないか。まあいい、ゆかりんなら納得だ。今度紅茶に毒を混ぜてやろうかな」
「うんと強い猛毒で頼む」
「珍しく気が合うじゃないか。―――さて、不本意だが君と共闘しなければいけないようだね」
「気が進まんがな」
「同意見だ」
「―――ところで、あの少女達は随分と変な来歴のようだな」

空夜は立ち上がった。周囲には妖怪と、その妖怪達と戦う雪舞桜御一行が居る。狂花は桜達を指差していた。

「数奇な運命という奴だね。幻想郷生まれ幻想郷育ちの引きこもり温室っ子は詳しくないかもしれないけれど」
「誰が引きこもりだ。外に出るのが正義などと宣うのか？下らん」
「なんとも言っていないじゃないか。自意識過剰かい？」
「喚くじゃないか元殺人鬼。引きこもる場所すら無かった人間が引きこもりを語るんじゃない」
「……突っ込む所はそこかい？」

空夜は呆れ顔で狂花を見た。狂花は妖怪の群れを眺めながら、魔導書を取り出している。

「まあいいけど、足を引っ張らないでくれ給えよ」
「ふん、此方の台詞だ」