【募集企画】東方幻想記録物語7巻 (ページ24)

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戦闘開始　空夜ページ24

「あのさぁ」

　黒岩将也が望山穂花を探知し、さあこれから解決に向かうぞという空気になった中、不機嫌そうに口を開いたのは、雪華だった。
　場に居る全員が雪華の方を向く。それは双子の姉である、藤華も例外ではなかった。

「私達はあんた達に従う必要ないよねー」

　空気が凍りついた。姉である藤華はクールな表情を歪め、雪華に近づいて「何を言っているのですか雪華！」と耳元で言う。だが雪華は何処吹く風、何の事やらという表情で開き直り、十六夜空夜に向かって氷のような冷たい視線を突き刺す。

「はっきり言わせて貰うね。私はあんたを信用してない。見ず知らずのあんたの提案、それも明らかに何かを狙ってる、あんたの。そんなのに乗るわけにはいかない。だったら私は桜様と藤華と一緒に、私達で異変解決に行く」

　空夜は芝居掛かった表情で困ったように肩をすくめる。神在月霊華は西行寺魂々葉と一緒に、困ったようにアワアワとしながら空夜と雪華を交互に見た。そして霊華は幼馴染だけは守ろうと桜の側へ移動する。将也も若干困ったように眉を下げる。空夜は顔を困り顔に形作りながら、

「困ったなあ。私は全く以て君が考えているような事は意図していない。だが君は私を疑い、単独行動をしようとしている訳だ。マァ別に私はそれでも構わないんだが、それで望山穂花を倒せるのかい？彼女は思っているより強大な妖怪だ。君達で勝てないとは言わないが、人数が多い方が勝率は高いだろうね」

　空夜は雪華に歌うような口調で語りかけた。雪華は苦虫を噛み潰したような顔で空夜を睨み、

「そんな薄っぺらな提案で私が絆されるとでも？あんたの魂胆は全部見えてる。私はあんたに従いたくはない。桜様や藤華と一緒に異変解決に行くよ。いっぺんあんたを叩き潰してからね！」

　雪華は、言うが早いかスペルカードを発動し、数々の弾幕を放った。空夜に向かって数え切れない程多くの氷の弾幕が襲いかかる。
　だが空夜はそれを空間を操る力の応用で別の場所にそれを転送し、砂埃で銀色の艶やかな髪に砂塵がまとわりつく中、涼しい顔でその場に立っている。それどころか弾幕を雪華に能力で撃ち返し、氷の弾幕で見事にカウンターを決めた。

「やれやれ、このような事態は好ましくないが…正当防衛だろう。神相手という事だし、久々に全力を出そうか」

　空夜はその美人顔を崩した。口を溶けたチーズのように引き伸ばし、宝石のような蒼い目は大きく開かれ、瞳孔が猫のように収縮したように思えた。
　空夜のその狂気的な笑みは、さながら悪魔のようだった。