食事の前には<戴きます>【中原中也(文豪ストレイドッグス)】 (ページ2)

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「…まァほら、手除けないとそのしるこも食えないだろ。ずっと顔を覆ってたらそのうち冷めるちまう」

高見はゆっくりと手を除ける。
紅くなった顔が、手と手のすきまからのぞいた。

可愛い、だなんて口にしたらいよいよ彼女の首は捥げてしまうだろうから、俺は黙っておいた。
あァ、でも此奴褒め言葉には耐性があるからなァ…
案外平気かもしれない。涼しい顔して笑うかも。

食べてもいい？

とでも聞きたそうにして、高見は俺の方を見た。
俺は黙って頷く。

朱色の箸を、高見はゆっくりと器に入れた。
はらりと落ちてきた髪を耳にかける動作が嫌に艶っぽくて、俺は目を逸らしそうになった。

箸に挟まれた小豆まみれの餅を、高見は控えめに開いた口に落とす。

「んんーーー！！」

頬を落っこちないように抑え、彼女は顔を綻ばせた。
はふはふと息を吐きながら、また一口。
控えめだが、しかし勢いよく食べる。

気づくとまた高見と目が合っていた。
そしてずず、と俺の方に器を差し出してきた。
なに、と聞く前に高見が言う。

「一口だけですよ」

ぴっと人差し指をたてる高見。
なんだ。俺は食いしん坊にでも思われているのか。

「いや、そうじゃなくて」
「え？」

俺が否定すると、高見は首を傾げた。

「…いい食いっぷりだなァって」
「なッ！？」

大きな瞳をさらに大きく開く高見。
その顔はまた真っ赤に染まった。

「酷い！！」

ころころと表情が変わる。
紅くなったり、ぶわぁっと笑ったり、怒ったり。
忙しいやつだ。

「人がせっかく一口あげようとしたのに女性に向かっていい食いっぷりダナーとは何事ですか！！」
「褒めてンだよ」
「嘘ばっかり！！」

もう絶対に一口あげないんだから！、と露骨に顔を背けて高見はしるこを再開した。