ブーケをきみに (ページ5)

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早番で17時に仕事が終わるからそしたら迎えに来るね、朝一で私の様子を見に来てくれたテヨンくんはそう言いながらカーテンを開ける。事実を受け入れることができない私は『早く出て行って』とテヨンくんに枕を投げつけ病室から追い出した。「何もしてあげられなくてごめんね」扉を閉める前に弱々しい声が聞こえて、冷静になった私はなんてことをしてしまったんだと思ったのはそれから数分後。慌てて追いかけたけれど、当たり前にテヨンくんの姿はもうなかった。自己嫌悪に陥り中庭をふらついていたら後ろから肩を叩かれた。お母さんは家で私の帰りを待っているし、そうなると病院内で私に声を掛ける人物はテヨンくんしかいないから、さっきのことを謝ろうと若干緊張しながら振り向くと、テヨンくんではなくニコニコと笑みを浮かべているジェミンがそこにいた。

『…え？』
「わ、なあに？俺のこと探してたんじゃないの？」
『びっくりした。まだ朝なんだけど、なんでいるの？』
「よく考えたらさ、何時に帰るか聞いてなかったな～って思って待ってたんだ」
『面会14時からなのに入って来れたんだ』
「病院の診察自体は10時からやってるから中には入れるよ」
『ああ、そっか……』

本当は心臓が飛び出そうなくらい驚いたけれど、それがバレたら絶対小馬鹿にされるだろうから表情に出ないように心掛けた。ジェミンは持っているコンビニ袋からプリンを出して「退院祝いしよう」と私の手を引き昨日と同じベンチに腰を降ろした。『……退院って1泊しただけだよ』「入院したことには変わりないよ。蓋取れる？」『そこまで非力じゃない』蓋を剥がした私に対し「上手にできたねえ」と拍手をしてきたジェミンは私を保育園児か何かと勘違いしているのだろうか。

「結果どうだったの？って、俺が聞いても大丈夫？」

プリンが残り半分になり、もう少し味わって食べようと手を動かすスピードを遅くしたら、聞いて欲しかったけれど聞いて欲しくなかった話題をジェミンがあげる。この先関わることは0%に等しいだろうから、ジェミンになら話せるなって口の中にいるプリンを飲み込んだ。

声が震えそうになるのをぐっと抑え、ジェミンの顔を見ずに、なんとも感じていないようかの口調で『プチ記憶喪失、みたいな』と淡々と告げた。
ジェミンはそこで引く気はないらしく「それで？」と続きを促してくる。……諦めてくれる気配はなさそうだ。残っているプリンを胃に掻き込み乾いた喉を潤わせた。