ブーケをきみに (ページ3)

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三ページ3

「お花誰にもらったの？」
『初めて会った人』
「どんな人？」
『かっこいいけどちょっと嫌なやつ。私と同い年なんだって。それにしては落ち着いてたから嘘付いてると思うんだよね』
「嘘ついて何のメリットがあるの」

すれ違う先生の白衣は汚れていたりよれよれしているのに、テヨンくんのものはアイロン掛けがしっかりされていて真っ白だ。おばさんは家事が好きで几帳面な人だからそれがいい感じに遺伝に受け継がれたんだろう。遺伝したのはアイロン掛けだけじゃなくて、ご飯が上手に作れるところもだ。
テヨンくんがまだ学生のとき、私の両親が仕事で遅くなりそうな日はよくご飯を作りに家に来てくれて、私に食べたいものはあるか聞いて、作ったことのない物だとしてもリクエストしたものは調べて作ってくれた。それがとってもおいしくて、今でも作りに来てほしいくらい。

「…何？さっきからずっと見て」
『テヨンくんのお嫁さんは大変そうだなあって』
「急に？」
『うん。けどさすがに早いか、まだ22歳だもんね』

催促したつもりはないのだけれど、そう聞こえてしまったのかテヨンくんの足は病室を目の前にしてピタリと止まる。困ったように眉を垂らしたテヨンくんは「今日はAちゃんに大切な話があるんだ」と呟いた。こんなに真剣な顔をしているのを見るのは久しぶりで、思わず背筋がピンと伸びる。テヨンくんはクールに見えて実はふにゃふにゃしてるし、お友達である悠太くんが自分以外の人仲良くしてたら拗ねてしまうような可愛い人。こんなに強ばった顔を見るのは、テヨンくんが所属していたダンスサークルのステージ発表のときくらいではないだろうか。

『…検査結果よくなかったの？』
「……」
『私の寿命はあと10年とか？』
「違う。順当であれば寿命まで生きられるよ」

……じゃあなんなんだろう。気持ちを落ち着かせたくて花束に花を近付けると、香りがきつすぎて思わず蒸せてしまった。1本だけならほんのり香って幸せになれるのに、束だとどうも刺激が強すぎるらしい。花粉のせいなのかくしゃみをすると、テヨンくんはやっと表情を崩して「何してるの～」とティッシュを私の鼻に押し付けた。

「とりあえず入ろう。変なところで引き止めちゃってごめんね」

私の背中を押したテヨンくんの手は微かに震えていた。……私相手にそんなに緊張して話すことがあるのだろうかと思い、大丈夫か尋ねたら、ジェミンみたいに悲しい顔で笑った。