言わせたがり。 (ページ6)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:8,532 hit

▽こわい先輩ページ6

黄side

高校二年生になった春。
今日が高２となって初めてとなる登校中に、すばる先輩と偶然にも会えたのは運が良い。

少し時間が危ういのに、のんびり桜の木を眺めながら歩く先輩は何にでも絵になる。

相手がこっちの存在に気付くとあからさまに嫌な顔をするのは理由がある。でもそんなのはお構い無しに手を振って走り寄って挨拶した。

髪を切ったのか腰まであった長い髪がバッサリと肩あたりまでに切りそろえられていた。
俺は髪が長いほうが好きだったから少し残念だ、セクシーでよかったのに。

「先輩、髪切っちゃったんすね。似合ってたのに」

「そう？大半の友達はこっちの方が似合ってるって言うてくれるで」

毛先をくるくる細い指でいじる姿は愛らしくて小動物みたいだった。
すばる先輩はこうして一つ一つの仕草が危うくて、無意識なんだろうけど全部の行動が男の性癖を的確に突いてくる。

「今日はあのストーカーな先輩はいないんすね」

「ストーカーって……ヨコは幼馴染やから一緒にいる時間が多いだけやって。お前は知っとるやろ？」

よく知りすぎて、逆にあの人は怖いんすよ。
中学の時に歯が折れるまで殴られた事件があったのは忘れられない、忘れるはずのない出来事過ぎた。

勿論その事件にはすばる先輩も関わっていて、俺が横山先輩に一方的に殴られているのを泣きじゃくりながら止める姿は今も鮮明に覚えている。

せっかくの花火大会はある『偶然』が重なり合って警察を呼ぶ騒ぎになるまで大事になった。

一人の女を取り合って男が殴り合うなんてドラマみたいで、ほんまに欲しいものに対して死にものぐるいになるのは人間の性やと思う。

だから高校も先輩を追いかける形でついてきた。
本人に引かれないためにスポーツ推薦なんて嘘までついて。

「僕ね、またバスケ部続けてるんよ」

「知ってる。
たまに学校の周り走ってるの見てるで、亮はスポーツしてる時が一番楽しそうやもん」

普段はドライで素っ気ない態度でつれないけど、こういう所が好きだ。

ああ、やっぱり一緒にいるなら先輩しかいないと改めて実感する。

「知ってんなら練習試合とか来て下さいよ」

「ええ、めんどいわ」

ばっさり断られる。他の女子なら誘わなくても応援に来るのに、すばる先輩だけは1度も応援に来てくれない。

どうやったらこの人は俺の物になるのだろうか。
まだその方法は見つかっていない。