言わせたがり。 (ページ5)

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▽気まずい後輩ページ5

赤side

次の日、重々しい体に鞭打って起き上がると昨日より痛む腹部。

このまま寝ていたいけど、新学期から休むのは流石に気が引ける。

育ち盛りだと言うのに手軽な菓子パンをつまんで朝食を済ます。
料理とか得意な方ではないから金に余裕が無い時はこんな食生活が3ヶ月は続いた時もあった。

「やば。もう8時半やん…」

いつの間にか帰ってきていた同じ部屋の子を起こさないように着替えて部屋を出ると同時に、スマホから無機質な機械音のメロディーコールが流れる。

「…もしもし」

知らない番号の電話に出ると相手は相当怒っているようで、甲高い声で随分ヒステリックなご様子だから恐らく女だ。

内容は朝からドロドロな話で自分には身に覚えがないけど、どうやら私が彼氏を盗ったらしくて初対面の人にビッチと罵られる始末。

まだ電話の向こうでぐちぐち騒ぐ彼女さんに「知らねぇよブス」とだけ言って通話を切る。
また電話がかかってきたら嫌だから今の番号を着信拒否に設定した。

今みたいなのは慣れている。
中学の頃から人の彼氏を奪ったやら何やら、冤罪なのに女子からは嫌われて3年間耐えて過ごしてきた。

ブスの嫉妬ほど醜いものはないって女子のリーダーに一度反抗したら椅子で殴られたのはいい思い出。皮肉だった。

「ん…桜散っちゃったんか」

入学式の時は満開に咲き誇っていた桜の花びらも、時間が経つにつれて地面に落ちて通りかかる人々に踏まれていく。

(あーあ、綺麗やったのに)

もうちょっと見ていたかった気持ちもあって、柄にもなく花ごときで気が落ち込んでいると道の奥に逢いたくない人物に気付く。

相手もこちらに気付いたのか、一瞬目を見開いてから嬉しそうに小走りで近寄ってくる姿はまるで大型犬。

「すばる先輩ｯ!!」

「おー久しぶりやな、亮」

にっこり笑って軽くお辞儀するのは一つ下の後輩、錦戸亮。

中学からの後輩でスポーツが強い高校だから、俺と同じ高校に入学したらしい。俺はスポーツとかじゃなくて、別の理由やけどな。

「また見ないうちに身長伸びたなあ。170cmはあるやろ」

「そうっすね、先輩は相変わらずちっちゃいけど」

こんな憎まれ口を叩いても愛され上手だから大抵の事は許されてしまう。
でも他の先輩が許しても俺は許さないから、めいいっぱい背伸びをしてチョップを下す。

「いって、ちっちゃい先輩が怒ったぁ」

「亮うざいで」

こんなやり取り、ヨコには見されへんな。