言わせたがり。 (ページ2)

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▽馴染みすぎた結果ページ2

赤side

春休み中は誰も入れないように締め切られていた部室を顧問から借りた鍵で久しぶりに解放すると、ふわり嗅ぎなれた匂いが鼻をくすぐる。

今日は気まぐれで学校に訪れたから自分のギターもない。その辺に落ちてる誰かが忘れていった雑誌を手に取って暇潰しに読んでいると、

「あ、誰かおる」

不意に扉の方から知らない男子が話しかけてきた。
身長が高くて顔も悪くない奴やからモテるんだろうなって勝手に想像する。

「…1年生か？」

「うん。俺大倉って言うんよ。
あんたは…同じ1年生ちゃうの？」

きっと幼い見た目で判断されたであろう言葉が胸に響く。失礼な言葉にむっとすると察したのか慌てて話を続ける。

「あっごめんなさい、先輩の方だったんすね」

「そやで。これからは気いつけな、中学とは違うから上下関係が激しいから」

素直に謝るのはいいと思う。少し抜けた子だから注意して扉に近付く。

「退いて、ここ閉めるから」

「あ、すんません」

30分くらいしか滞在していないが、まさか人が来るとは思わなかったから人見知りを発揮して早々にその場から1年の後輩を置いて退散する。

「……あ、ちょっと待ってよ!」

後ろからの制止の声は校内放送でかき消されて私の耳には届かなかった。

昇降口から出て門に近寄ると横からすっと出た手にびっくりするも、それが知り合いだと分かると掴まれた腕の力が抜けていく。

「なんやヨコか」

「お前が住む寮に行っても居らんから、ここかなって思ってきたらやっぱりやな」

しかめっ面をして俺に上着を着せてくる幼馴染。
何も羽織らずパーカー1枚で外に出て来たから暖かくて持ってきてくれたヨコにお礼を言う。

「すばるは俺がおらんと何も出来ひんからな。はよ家帰るで、俺ん家寄ってくやろ？」

「じゃあ行くわ」

歩き出してすぐ差し出してくる手を繋ぐと満足そうにするヨコはほんまに幸せそう。

ヨコとは付き合ってるわけじゃない、ただの幼馴染。
まずどちらも告白してないし昔からの癖もある。

幼稚園から高校までずっと一緒に過ごして来たから兄弟らしいって言われる方が俺はしっくりきた。

そろそろ横の家に近づいてきた頃、何も喋らなかった幼馴染が口を開く。だけどその内容は俺にとって嫌な報告で、

「なぁ、すばる」

「ん、どしたん？」

「俺な、軽音部に入ろうか悩んでるんやけど」

なんて言うから、飲んでいた缶ジュースを噴きそうになるのをギリギリで抑えれた。