おかしいの ページ5
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「傑がなんかおかしいの」
私が言うと、硝子はグラスにジュースを入れながら「ふーん」と適当な返事をした。
私としてはもっと興味を持って真剣に聞いてほしいことなのだけれど、硝子からしたらどうでもいいことなのだろうから仕方がない。私が勝手に硝子の部屋に押し掛けて相談しているのだからワガママは言えないだろう。
硝子が「ほらよ」とグラスをミニテーブルに置いてくれて、私はそれにありがとうと言いながら口をつける。炭酸がぱちぱちと口の中で弾けた。
「傑が何も言ってこないの」
「仲直り出来たんじゃないの?」
「出来たっちゃ出来たんだけど……」
私が謝って、傑が許してくれた。私の気持ちは分かっていると言ってくれた。正直、拒絶の言葉が飛んできてもおかしくないと思っていた私は安心してしまったのだけれど、傑の様子がなんだかおかしいことにはその時点で気付いていた。
「だって、傑泣いてたんだよ?泣くくらいのことだったのに、怒ったり悲しんだり、そういうの何も言わないから……」
「アイツのことだし、自分の中で片付けてるんじゃないの」
それはそうかもしれない。傑は大人だから、自分の中で解決してしまっているのかもしれない。
でも、自分の気持ちを、傑の気持ちを言ってほしかったという気持ちもあって。
「それにね」
あとひとつ、思っていた違和感。
「傑の様子がちょっとよそよそしい気がして」
「そう?いつも通りに見えたけど」
そう。端から見ればいつも通りなのだ。話しかければ返してくれて、授業も普通に受けて、悟るや硝子や私と戯れて。でも、なんだろう、何処か上の空というか、特に私について、線を引いているというか。
なんとなく、違和感があるのだ、今日の傑には。
「やっぱり、許してはくれたけど、私のこと嫌いになっちゃったのかな」
「それはないだろ。アイツAのこと大好きだぞ」
「でも、今までの不満とか、呆れとか、そういうのが度重なったらどうなるか、分かんないじゃん……」
傑を信用していない訳じゃない。だけど、思ってしまう。不安になってしまう。このまま傑が離れていってしまうんじゃないかって。私が放った心にもない言葉で、傑が私の元から居なくなってしまうんじゃないかって。
それだけが、ひたすらに怖い。
「……まぁ確かに、どうなるかなんてわかんねーけどさ」
と、硝子が言った。
「アイツがアンタのこと何よりも大事にしてんのは確かだよ」
傑の、私を見る柔らかな笑顔が脳裏を過った。
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翠(プロフ) - はああああほんっっっとに…癒されました……ありがとうございます……… (2023年1月7日 23時) (レス) @page9 id: 375689edf5 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 夜顔さん!コメントありがとうございます!夏油さん泣いちゃったら可愛いなぁというだけで書いてしまったのでどうなることやらでしたがなんとか完結出来て良かったです!(笑)こちらこそそんな風に言って頂けて嬉しいです!読んでくださりありがとうございました!! (2022年1月23日 11時) (レス) id: 4cbec933ab (このIDを非表示/違反報告)
夜顔(プロフ) - 夏油様が可愛くて格好良くて萌え死にそうでした😆こんな良い作品をありがとうございますっ! (2022年1月23日 4時) (レス) @page9 id: a5b9bd8745 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2022年1月21日 13時