エメトフィリア ／ em ページ16
びちゃびちゃ、と彼女の口から溢れる吐瀉物が床を汚す音だけが部屋に響き渡る。普段は雪のように白い肌が林檎のように赤く染まり、彼女は苦しげに大きく肩を上下させている。けほ、と咳き込んだ後、彼女は潤んだ瞳で此方を見上げた。視線が絡み合う。彼女の瞳から涙が零れ落ちた。
｢え、みーる、さ、｣
｢……ふふ、そんな顔しなくても。本当に、Aさんはいい子ですね。｣
鼻を突く匂いに口角が吊り上がる。ゆっくりと彼女に歩み寄り目線を合わせてやると、彼女の肩がびくりと揺れた。怯える彼女の頬に手を添え優しく撫でてやる。此方の手が汚れることを気にしているのか、此方の顔と添えられた手を交互に見遣るその姿も可愛らしい。
彼女は嘔吐という行為が嫌い、と言うよりは苦手であった。この行為が得意だと言う人間の方が少数なのであろう。吐き出す姿も、吐き出されたものも、決して美しいとは言えないその一連の行為は出来ることなら皆避けたいことだろう。
しかし、私はその行為が好きだった。苦しそうに吐き出す姿は加虐心を唆られ、吐瀉物にはどこか美しさのようなものを感じることもある。墓場まで持って行こうと決め、今まで誰にも言うことの無かったこの性癖を暴露したのは彼女が初めてだった。彼女が優しく、頼み事を断れない性格だということを分かっていたから。だから自身の想いを伝える際にこう言ったのだ。
｢貴女を愛しています。貴女が私の想いに答えてくれるのなら、私の全てを受け入れてくれませんか。｣
その結果が今。彼女は私を喜ばせる為、私が望めば怯えた表情をしながらもいつでも嘔吐する姿を見せてくれる。嫌なことを愛する自身の為に必死になってしてくれている。その姿が酷く愛おしく、彼女の事が好きなのだと再確認させられる。
吐瀉物に塗れ涙を流す彼女をそっと抱きしめる。びくり、肩が大きく揺れたのを感じ、優しく頭を撫でてやる。恐る恐ると背に回された手に嬉しさから頬が綻ぶ。彼女の顔を覗き込み、｢愛しています。｣と小さく言葉を紡ぐと｢わたしも、あいしてます。｣とふにゃりと微笑む彼女。幸せそうな彼女の唇に自身の唇を重ね瞳を閉じる。いつまで続くか分からないこの幸せに浸るように。
こんなにも穢れた私を愛してくれる貴女は、間違いなく私だけの、穢れゆく天使なのだ。
─
エメトフィリア：吐瀉物や嘔吐に性的興奮を感じる性的嗜好の事。
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平凡な人(プロフ) - うん。凄い。性癖にドストライクで刺さりました!更新楽しみにしています！ (2022年2月3日 20時) (
レス) @page9 id: 244f5e227a (このIDを非表示/違反報告)
空白(プロフ) - めちゃくちゃ好みです！！毎回更新楽しみにしてます♡ (2022年1月26日 10時) (レス) @page22 id: 765b91b6bf (このIDを非表示/違反報告)
りんごうまい - ところどころ性癖に刺さった (2021年10月21日 23時) (レス) @page20 id: ef60100ca2 (このIDを非表示/違反報告)
たらい(プロフ) - ど趣味でえぐいっすふファンになりやした (2021年8月1日 0時) (レス) id: 0b993ff198 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - 好きです!! (2021年6月13日 14時) (レス) id: f606088b79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：悲哀 | 作成日時：2021年5月28日 19時
