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「お待たせ、松田。」
静まり返った会議室で残りの報告書を片していると、勢いよく開いた扉。若干息を上げたヒロが小走りで駆け寄ってきた。
『遅せぇーよ。』
「ごめんごめん。でも科捜研から来たには早い方でしょ?それで?見たい書類はどれ?」
俺の周りの散らかった書類を見渡すヒロ俺は分厚いファイルを手渡す。渡した報告書に目を通すヒロの表情から知っている案件だということは想像に難くなかった。
「今日は特別だからね。」
『あぁ。恩に切る。』
「じゃあ詳しくは公安部の行き道で。って、あれ?Aは?」
今になって気がついたのか、会議室をキョロキョロし始めるヒロ。
『人員不足とかで外出たぜ。』
「え?そんな話聞いていないんだけど?」
『うちの警部さんから連絡があったんだと。今頃お前のお仲間と仲良く聞き込み中だ。』
「そんなに不機嫌にならなくても(笑)」
クスクスと笑うヒロに俺は電話中に送られてきた愛想のかけらもないメッセージと位置情報を見せる。
笑っていたヒロだったが、俺のスマホの画面を見た瞬間表情が固まった。
『どうした?』
「あ、いや…。今日こんなところで聞き込みなんて予定あったかなって思って。それに…」
『それに?』
「さっきの渋谷区のガス漏れ騒ぎ、本当は爆弾が仕掛けられていたんだ。でも、どうやら国際組織が関わっている可能性があって公安案件になったから、詳しい場所とか公表されていなかったんだけど…」
『おい、まさか…』
「ここ、その爆弾が仕掛けられていた場所だよ。」
『はっ…?』
「偶然、かもしれないけど…」
嫌な予感が頭を巡った俺はすぐさまAに電話をかける、が出ない。
携帯を鳴りっぱなしにさせたまま俺は内線を使い、警部さんに電話する。
「はい、目暮。」
『おい、警部さん!アンタAに行けっつった場所、誰からの指示だ?』
「松田くんか?はて、何のことか?」
『さっき、Aの携帯に電話したろ!聞き込みの人数が足りねぇから公安部の奴らと合流しろって!』
「あ、いや…それがワシ、今日の朝から携帯を無くしてしまってな。まだ見つかっておらんのだよ。」
『はっ…?じゃあ、Aに、』
「今日ワシは小松くんに連絡しとらんが、何かあったかね?」
「おーい松田くん」と受話器越しに聞こえる声はもう俺の耳に届いていない。
「松田…?」
『……っ、クソ、やられたっ…』
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作者名:舞子 | 作成日時:2022年11月8日 22時