39 sideY ページ39
＊
『確かに……ほぼ間違いないわね。』
松田くんの言葉に私も頷く。このガス漏れ騒ぎ、一応事件事故の両面で捜査が続けられていたのに、途中から特に大きな決め手もなく事故だと断定され、報告書も不自然にまとめられていた。
私は知っている。このやり口を。
一度だけあったから。
私がまだ捜一に異動して間もない頃、外国人だけ狙う連続傷害事件が発生した。そのとき、私たち強行犯三係が主導で行っていた捜査がある日突然打ち切られた。
先輩刑事によると、こういう場合は大抵公安案件になったことを示すと話していた。
公安部に引き継ぐために短期間で辻褄を合わせた報告書を作成し、捜査を一旦終了させる、と。
『この報告書……公安部のやり方だわ。でも松田くん、よく気付いたわね。』
「機動隊時代たまにあったんでね。さて、ここにあんのは刑事部の資料だけだ。公安部に乗り込んでこの類の書類を拝ませてもらうとするか。」
『そんなに簡単に見せてもらえるかしら。』
「合同捜査の一員なら当然だろ。ま、とりあえず諸伏に連絡する。」
そう言って携帯を取り出す松田くん。
諸伏さんは確かかろうじて残っていた爆弾の成分解析のため科捜研に向かうって話していたから、もし承諾されても今日中に資料の確認をするのは難しいかもしれないわね。
諸伏さんと電話が繋がったようで事情を話す彼の姿を眺めるけど、あまりの高圧的な態度と口の悪さに、大丈夫なのかと不安になってきた。
穏やかな諸伏さんと、ヤンチャな性格の松田くん。
どうしてこの二人、仲が良かったんだろう…？
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作者名：舞子
| 作成日時：2022年11月8日 22時
