23 sideZ ページ23
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「悪りぃ、待たせたな。」
待ち合わせの場所に到着し、しばらくすると少し遅れてやってきた松田が助手席に乗り込む。
『気にすることない。それより松田、大丈夫だったのか?ヒロから聞いたぞ。爆発に巻き込まれたと。』
「問題ねぇ。体もこの通りピンピンしてるしな。で、頼んでいた件、何かわかったか。」
『あぁ。でもまさか、松田に頼られる日が来るとはな。』
ファイルを取り出し、僕は松田に手渡す。
サングラスを外し、真剣な表情で松田は資料に目を通し始めた。
『10年前の4月、松田の言う通り、公安が担当した案件があったよ。ガス栓の老朽化による爆発事故だと処理された。』
「でも、実際はそこの研究所を狙った事件だったってわけか。」
『あぁ。だから、遺体の身元どころか、死者がいたことすら公表されていない。』
「公安の案件になったということは、犯人の目星はついているって事だよな。」
『…それは、』
「“ Прамья ” 」
松田は資料を読みながら、そう一言つぶやいた。
『お前、どうしてその存在を…?』
「Aから聞いた。その研究所の死者の中にAの両親がいる。」
『え…?』
「Aは目の前で両親を亡くしてから、独自にその爆発事件のことを調べていたんだと。似たような事件を調べていたらそこで“プラーミャ”と呼ばれる組織が浮上してきた。」
『……』
「ゼロのその反応を見ると、やはり、Aの両親の事件にはそいつが関わっているんだな。教えてくれ。そのプラーミャって奴のこと。」
鋭い目付きで俺に問い詰める松田。
この事件は手掛かりが少なく、目撃者もほとんどいなかったと言うのに。まさか、松田が探していた女性が深く関わっていたとは。
『公安案件だから詳しいことは話せないが、ロシアを中心に活動する国籍性別年齢全て不明の殺し屋だ。』
「なんでそんな奴がAの両親を…?」
『日本でプラーミャが仕掛けた爆弾の一部が見つかってね。その成分の解析をその研究所に依頼したようなんだ。そこで、爆発に巻き込まれた。』
「なるほど、そういうことだったのか…。」
『その子、今まで大丈夫だったのか?』
「どういうことだ?」
『プラーミャは自分の存在を知った人間は全てこの世から消しているという話を聞いたことがある。もしその子が犯人の姿を見ていたとしたら…、』
「命が危ねぇってわけか。」
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作者名:舞子 | 作成日時:2022年11月8日 22時