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「あー、いたいた、じんぺーちゃん。ちょっと大丈夫だった?」
ベッドサイドのパイプ椅子に座っていると、病室の扉を開けたのは萩。
機動服を着ている、ということはあの現場から直行してきたんだろう。
『あぁ。問題ない。かすり傷だ。』
「もー、巻き込まれたって聞いたときは驚いたよ。無事でよかった。そっちの美人さんは?」
『幸い大きな怪我はしていない。ただ、爆発の衝撃で気を失ったみたいだ。』
「そっか。聞いたよ。じんぺーちゃんが咄嗟に彼女を庇ったって。何がかすり傷よ。そんな包帯たくさん巻いて。」
『……』
「守りたかった子なんだろ?よかったな。」
萩には話していないはずなのに、なぜか知っているような口振り。
昔から萩にはこういうところは隠せない。
『現場の方は?』
「あれから隈なく周辺を探したけど爆発物らしきものは見つからなかったよ。じんぺーちゃんが言ってたとおり…、」
『やはり狙いは警察官だったか。』
「多分。」
別の場所で同じような爆弾が見つかったのならまた話は変わってくると思っていたが、何も出てこなかったということは。
目的は元々俺らだったってわけか。
だがわかんねぇ。
警察が狙いならもっと他にやり方があるだろう。
たとえあのとき爆発してきたとしても、巻き込まれた人数は二人。
警察官を狙ったテロにしてはどうも中途半端だ。
「それより、じんぺーちゃんの病室で看護師さん探してたぜ?」
『……すぐ戻る。』
「ま、うまく言っといてあげるよ。」
「んじゃ、ごゆっくり〜」と手を振った萩は病室から出ていく。
Aの方に目を向けるけど、やはり目を覚ます様子はなかった。
「馬鹿野郎、無理してんじゃねーよ。」
あのとき、Aが気付かなかったら、俺らはどうなっていたのだろうか。
爆発の瞬間、自分が死ぬことより、Aがまた姿を消す方恐怖に駆られた。
やっと再会したというのに。
やっとこの手をもう一度触れることができたというのに。
右手に感じるAの体温に今の俺は心底救われた。
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作者名:舞子 | 作成日時:2022年11月8日 22時