記憶を求めて 2【時透無一郎】 (ページ47)

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96.大人しくページ47

「っ！もう、縁起でもないこと言わないで！」

顔に集まる熱を誤魔化すように、お盆の上に乗せていた湯飲みを持ってお茶を勢いよく飲み干す。

ちょうど湯飲みを戻したとき、その手首を掴ま
れた。

「ねぇ、答えになってないんだけど？」

私たちの間においていたお盆を空いた手で遠ざけて、私の直ぐ隣に詰め寄った無一郎くんの顔が更に近くなる。

「え、えっ…！？」

「ねぇ、どうなの？」

恥ずかしくなって顔を逸らせば、彼の手が私の顎を掴んで強制的に無一郎くんの方へ顔を合わせられた。

彼と視線がぶつかる。

「…っ！！」

「答えられないの？…僕はAがずっと眠ってたとき心配だったよ」

そう言って悲しそうな目をするから、きゅっと胸が締め付けられる。

私は無一郎くんに物凄く心配かけたんだ。

「………そんなの、心配するに決まってる」

「そっか」

納得したのか嬉しそうに微笑む彼。

こんな間近でその顔はずるい………

また頬が熱くなっていくのを感じて堪らず口を開く。

「ねぇ、そろそろ放してくれる？」

瞬きをした彼が「うーん」と何かを考える素振りを見せる。

そこ、悩む所なの？？

「ほ、ほら、ご飯も作らないといけないし………」

「ね？」と言い聞かせるように言えば閃いたような顔をする。

「じゃあ、炭治郎の話しは禁止ね」

「えっ？」

まさかの条件に固まっていると、また顔を覗き込まれる

「出来ないの？」

「だ、だって………それは難しいよ」

蝶屋敷の話題を出そうとしたら、自然と彼の話題も出るわけで。

でもそれほどまでに炭治郎くんの存在が嫉妬する対象になっているのかと思うと、それはそれで嬉しいような複雑な気持ちだった。

「……そう。じゃあ暫く大人しくしときなよ」

「きゃ！」

急にぐいっと引っ張られたかと思うと、次の瞬間には彼の膝の上で横向けに抱き締められていた。

「えっ！？えぇぇぇっ！！？」

「うるさい」

むすっとした口調でそう言うから、強く怒ることも出来ない。

と言うか、この状況に私はだいぶ困惑していた。