91.回りくどい ページ42
「お前がAか。話は甘露寺から聞いている。二度も記憶喪失になるとは余程運の悪い奴だな」
「は、はい…?」
蜜璃ちゃんのお誘いで今日はご飯屋さんに来ている。
数分前のことだ。
今日は甘味処じゃないのか、珍しいな。
と思っていると、蜜璃ちゃんが“後からもう一人くる”のだと言う。
「Aちゃんの話題になったときに、今日会う約束してることを話したら、自分も行っていいかって」
「そうなんですか」
「急でごめんね。でも、今日はその人が奢ってくれるから!」
なんて言われたら断れない。
暫く2人で最近あったことや、記憶が全て戻ったことなんかを話し込んでいるとその人は現れた。
口元を布で覆っていて、左右で目の色が違う不思議な容姿の人。
首に蛇を巻き付けて縞々の羽織を着たその男性は、会うなりあんなことを言うものだから返答に困る。
「Aちゃん、紹介するわね。こちらは蛇柱の伊黒小芭内さん」
「へ?」
蛇柱!?
通りで個性的な訳だと納得する。
蜜璃ちゃん、それならそうと早く言って〜!
と思いながら慌てて挨拶する。
「は、初めまして。Aです。よろしくお願いします。今日はご馳走していただけるみたいで、ありがとうございます」
「あぁ、よろしく頼む。まぁなんだ、確かに今日はご馳走してやるが遠慮と言うものを忘れるなよ」
「えっと…?はい」
な、なんだろう………
掴み所がない。
そしてなんか、なんと言うか、言い方が回りくどい!
なんだこの人は。
そう思うけれど、蜜璃ちゃんと話しているときは普通に見える。
え、私に冷たいだけなの?
私、何かしちゃった??
考えるけれど、寧ろこっちが被害者だったと思い返していると蜜璃ちゃんが話しかけてくる。
「Aちゃん。ええっと、さっき何処まで話したかしら?」
「記憶が全部戻ったところまでです」
言えば、伊黒さんが意外そうに目を見開いた。
「なんだ、記憶は戻っているのか」
「はい。お陰さまで」
「それで?無一郎くんとは最近どう?」
「それなんですけど………」
言いかけて、ちらりと伊黒さんを見る。
「俺のことは気にせず話を続けろ」
と言われても、初対面の人にこういう話を聞かれるのはやっぱり気になる。
ましてや男性。
しかも柱だ。
けれど、気にしない素振りで伊黒さんは店主に注文を頼み始めた。
仕方ないと私も諦めて蜜璃ちゃんとの会話を再開することにした。
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作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時