88.過去─あの時の真相 ページ39
そうと決まれば話しは早い。
翌日、早速親戚のおじさんが使っていたという家を目指すことになった。
昨晩のうちに簡単に纏めていた荷物と、今だ意識が戻らない母を荷車に乗せ、家族全員で目的地を目指した。
あいにく曇り空の今日はパラパラと小雨が降ることもあったけれど、問題なく進んでいく。
町を2つ程抜けて、山道に入って、また町を抜けて。
と、見える景色はどんどん田舎の風景に変わっていく。
途中、昼食をとったり、父が道を尋ねたりと休憩しながら進んだ。
日が暮れた頃、父が近くの民家に道を尋ねに行った。
戻ってくると『あと少しだ』と言ってまた荷車を押して歩き出す。
民家の端にどこまでも続いていそうな森に沿うように延びた道を歩いていく。
ガタッと荷車が不自然に揺れた。
荷車を引いていた父が一番最初に気がついて振り向く。
『目が覚めたか!?』
ゆっくり荷車の持ち手を下ろした父が母に駆け寄る。
それを見て私と兄も近くに寄った。
けれど、母の様子がおかしい。
ふぅふぅと息を荒くして地面に立った母。
『どうした!?苦しいのか?』
声をかけた父。
『大丈夫なのか?』
父が母に触れようとしたその時、母が父に飛びかかった。
『ぎゃあああ!!!』と父が叫び声をあげる。
『お母さん!?お父さん!?」
父の肩にかぶりついている母。
苦しそうな父の叫び声が辺りに響き渡る。
「やめろ!母さんなにしてるんだ!!』
兄が母を引き離そうとしたのを手伝おうとしたとき、母が父を放り投げた。
地面に投げつけられた父に気を取られていると、母の手が勢いよく私に伸びてくる。
それを見た兄が私を突き飛ばした。
倒れ込んだ体を起こして立ち上がると、母の手が兄の首を掴んでいた。
『うっ!…ぐっ………!』
『お、お兄ちゃんっ!』
苦しそうな姿に目の前が真っ暗になる。
『なんで?……お母さん、どうしたの!?』
母がおかしくなった。
とても恐ろしい顔で私たちを睨み付けるその顔に、いつもの優しい表情は何処にもない。
母が、いつもの母じゃない。
こんなの嘘だ。
そうだよ、嘘に決まっている。
『────!──っ!!おいっ!───のか!──A!!!』
『…!?』
そこからは私がよく覚えている通りだった。
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作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時