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72.焦り ページ23

伊之助くんに少し遅れて着いていくと裏山の開けたところに辿り着いた。

炭治郎くんの背中から振り返ると、下の方に蝶屋敷が見える。

「すごい…」

それほど高い山ではないけれど、いい眺めで思わず声が漏れた。


「ひゃっほー!」と何処で見つけたのか鹿に跨がった伊之助くんが張り切っている。

その鹿に何故か追われている善逸くん。
「ぎゃああああ!!何とかして!!!」と必死に逃げ回っている。

そんな2人を眺めながら、目の前の彼に声をかける。

「炭治郎くん」
「ん?どうした?」
「ちょっと降りてみたい」
「えっ?いや、でも……」

彼の体があたふたと慌てるのが背中越しに伝わってくる。

「私、早く歩けるようになりたい!体を元に戻して、やりたいことがあるの」
「やりたいこと?」
「うん。料理がしたくて」

「焦らなくてもいいんじゃないかな?」

諭すように言い聞かせる彼に頼み込む。

「約束したから、ふろふき大根作るって。…お願い!」

「………分かった」

そう言って、背中の私を近くの切り株に座らせる。

くるっと私の方を向いた炭治郎くんが、一度私を持ち上げると立たせてくれた。

流石、男の子なんて感心していると手を貸してくれたので握る。

ゴツゴツしていて、傷や豆だらけの手。
炭治郎くんの努力の証だ。

それを支えにゆっくり足に力を入れて一歩踏み出そうとする。

けれど、うまく出来なくて膝から崩れ落ちた。

「っきゃ…」
「A!」

支えてくれた炭治郎くんのお陰で転ぶことはなかったけれど、現実を思い知らされる。

「Aちゃん!?」
「どうしたお前ら!!」

気が付いた善逸くんと、いつの間にか鹿を手なずけた伊之助くんが鹿の背中に跨がったまま私たちのところにやってくる。


「天気が良かったから、気持ち良くて歩いてみたかったんだけど、やっぱりまだだめみたい」

あははと笑ってごまかす。

「おい、無茶すんじゃねーぞ」と素直に受け止めた伊之助くん。


けれど、善逸くんはどこか納得していないように浮かない顔をしていた。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 時透無一郎   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時

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