52.拗ねる ページ3
「まだ怒ってるの?」
「別に?怒ってませんー」
口ではそう言っても実際は少し違う。
ぷんぷんとわき上がるそれを紛らわせるのに大股で歩く。
男の子って無神経なところあるよね。
無一郎くんに関しては直ぐに忘れちゃうから特にそう。
まぁ、仕方ないんだけど。
何処にもぶつけられないもやもやを晴らすべく、すーはーと深呼吸してみる。
歩き続けて気がつけば、もう無一郎くんの御屋敷を越えてから随分立つ。
隣町には何度か行ったことがあるけれど、蝶屋敷から歩くとこんなに遠く感じるのか…と思いながら回りの景色を見渡した。
小さな村があるここはそれほど人が多く住んでいる訳ではないけれど、通行の要所だった。
その為か、お食事何処や甘味処があったりする。
「休憩しよう」
周りの景色を眺めて無一郎くんが言う。
「え?でもほら、町まであともう少しですよ?」
「Aを無理させると、僕が胡蝶さんに怒られる。…あと、お腹空いた」
言われてみれば、太陽はもうすぐ頭の真上に来そうだった。
「じゃあ、お昼にしましょうか。何食べます?」
聞けばふいっと視線を反らす無一郎くん。
「Aが好きなものでいいよ」
「いいんですか?」
「…だからさっさと機嫌直して」
「え?」
これは照れてるのかな?
私が怒ってたこと気にしてくれてたんだ?
不器用だけど、そういうところ優しいよね。
そっと顔を覗き込んでみる。
「なに?」
「無一郎くんって意外と優しいね」
「何だよそれ」
「ふふふっ。分からないならそれでいいです〜」
笑えば彼が首を傾げる。
「変なやつ」
「無一郎くん、うどんとかどうですか?」
私はお店の表に掛かっていた暖簾の文字を指差す。
「何でもいいよ」
「じゃあ、決まりですね」
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作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時