51.頼られる ページ2
訳も分からないまま、無一郎くんに手を引かれて蝶屋敷を出た。
屋敷には戻らないと言っていたのに、歩いているのは無一郎くんの御屋敷までの道のりと同じだ。
「無一郎くんそろそろ教えて下さい。これ、御屋敷までの道と同じですよね?もしかして道忘れちゃいました?それと長期任務はどうしたんですか?」
「忘れてないよ。今まさに長期任務の途中だし、屋敷を通りすぎた先の隣町に向かってる」
「隣町……」
そういえば無一郎くんは蝶屋敷でも隣町と言っていた。
そして隣町と言うと一つ思い当たる事がある。
「もしかして、最近若い女の子が居なくなっているっていう噂を確かめに行くんですか?」
聞けば彼が驚いた顔で私を見た。
「知ってるの?」
「この前、蜜璃ちゃんと話してた所なんです。隣町や近くの村でちょっとした騒ぎになってるって」
「そう」
「鬼か人拐い何じゃないか、って蜜璃ちゃんは言ってましたけど、無一郎くんが動くってことは鬼なんですか?」
「まだ分からない。でもそれを確かめる。その為には僕だけだど、どうしようもないことがある」
「どうしようもないこと?…だから私を呼んだんですか?」
「そうだよ」
素直に私を頼ってくれた事は嬉しい。
けれど、これって鬼殺隊の任務なんだよね?
そう考えたとき私の頭にあの日の会話が浮かぶ。
「あの…無一郎くん?」
顔色を伺いながら隣で半歩先を歩く彼に尋ねると「なに?」とこちらを振り返る事なく無一郎くんが言う。
「無一郎くんが私を頼りにしてくれるのは、とても嬉しいです」
「うん」
「ただ、私はくノ一でもなんでもないので、潜入はお断りですからね」
「は?」
ぽかんとしている無一郎くんにもう一度言う。
「だから宇髄さんとこの奥さんとは違うんで、潜入は無理ですから!」
私は只の記憶喪失の娘なのだから。
そう思って言ったのに、無一郎くんが今にも笑い出しそうな顔をする。
「な、何が可笑しいんですか!?」
「僕だってAがそんな器用らなこと出来ると思ってないよ。だって、料理しながらぼーっとしちゃうし、何よりおっちょこちょいだし」
「………。」
何だろう。自分で言っておいてあれだけれど、ちょっと腹が立つ。
「ねぇ、無一郎くん、もう少し言い方ってものがありますよね!?」
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作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時