57.手掛かり ページ8
「もうすぐ夕方だ。手掛かりも見つけたしAは日が暮れる前に帰りなよ」
無一郎くんにそう言われて、蝶屋敷へ戻るべく私はとぼとぼと川沿いを歩く。
彼は「まだ少し近所を聞いて回る」と言ったので「私もまだ残る」と言ったけれど断られてしまった。
「またこの前みたいに日が暮れても、ここからじゃ屋敷まで時間も掛かるし、僕は任務だから送れないんだけど。また面倒起こす気?」
そう言われてしまっては、前回お泊まりさせてもらった時のこともあるから何も言い返せない。
まぁ、情報が集まったらあとは鬼を見つけて退治するだけ。
そこに私の出る幕なんて何もない。
無一郎くんは強いし、この調子なら2、3日であっさり解決するかもしれない。
とにかく、私は彼の重荷にならないように言われた通り帰ろう。
鬼殺隊の人間ではない私には鬼と遭遇しても何もできない。
悔しいけれど、無一郎くんが正しいのだから。
暫く川沿いを歩いていると男の子が一人、土手に座り込んでいるのが目に入った。
7〜8歳ぐらいだろうか?
何だか暗い表情をしているその姿が気になった私は声をかける。
「こんにちは」
ビクッと方を震わせた男の子。
そんなに驚かなくても…と思いながら尋ねる。
「こんなところで座り込んでどうしたの?」
彼の隣に同じように腰かければ、視線を戻した男の子がぶっきらぼうに答える。
「別に。お姉さん誰?この辺じゃ見ない顔だけど、よその人?」
「そうだよ。隣町から来たの」
「だったら早く帰った方が良いよ。じゃないとお姉さんも河童の化け物に拐われちゃうから………」
「拐われる…?」
この子、今拐われるって言った?
「ねぇ、もしかして河童を見たっていう男の子って君?」
「…!」
聞けば驚いた顔で私を見た。
「そうなの?もしそうなら、その河童が何処に行ったか分かるかな?」
「………知らない。けど、山から降りてきた」
「山から?その後河童はどうしたの?」
「………女の子を川に引きずり込んで。………動かなくなってからその子を担いで…また山に帰ってった………」
青ざめた顔で話す男の子の手が震えている。
聞き込みで、女の子が拐われた瞬間を目撃したという話は出てこなかった。
たぶん、恐ろしくて言えなかったのだろう。
ポロポロと大粒の涙をこぼし始めた男の子。
その手をそっと握って「大丈夫だよ」と声をかける。
私はその小さな背中を優しく撫でた。
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作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時