55.八百屋 ページ6
「おじさん、こんにちは」
町に着いた私たちは早速市場へと繰り出した。
店先で元気良く話しかければ、私に気付いた店主が声を上げる。
「お!Aちゃんじゃねーか!久しぶりだな!またお使いかい?」
「はい、そんなところです。ここは珍しいお野菜や果物があるので、買って帰るとみんな喜ぶんですよ」
「そうかい!そうかい!でも、今日は人参とじゃがいもが安いよ〜どうだい?買ってくか?」
何度か通って顔馴染みとなった八百屋の店主はとても話が上手い。商売上手だ。
「じゃあ、頂こうかな」
「おや?今日は連れがいるのか?」
店主の視線を辿るとその先には無一郎くんの姿。
彼とここに来るのは初めてだったから、店主がじぃっと見ている。
「弟か?」
弟と認定された無一郎くん。
まぁ、実際私の方が年上だから間違いではない。
ムダに言い訳を並べるより、店主に話を合わせた方が楽だと判断した私は「は?」と顔を歪める彼の脇を肘で小突く。
「そうなんですよー。今日は弟と一緒なんです!」
「へぇ、ねーちゃんの手伝いか!偉いな!」
「…。」
不服そうな無一郎くんが視線で何かを訴えているけれど、気にせず話を続ける。
「おじさん、最近この町で若い女の子が行方不明になっている話し、知ってます?」
「ん?…あぁ、うちの嫁が何か話してたやつか」
顎に手を当てた店主が心当たりがありそうな口振りを見せた。
早速、有力な手掛かりが得られそうだと感じて話を続けてみる。
「物騒ですよね。私、怖くて。その子たちがいつどこで居なくなっているのかとか、何も分からないから、どう気を付けたらいいのか分からないし…」
「なるどなぁ。それで今日は弟も一緒なのか!」
頷けば勝手に納得しだした店主が話を進める。
ちょっと違うけれど、まぁいいか。
「ちょっと待ってろ。そう言うのは嫁のが詳しいからな!………おーい!」
店主がお店の奥へ呼び掛けると、美人で上品そうな奥さんが出て来た。
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作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時