8.機能回復訓練の彼ら ページ8
「Aちゃん!」
「あ、善逸くん」
しのぶさんに診てもらった帰り。
部屋の前を通る私を目敏く見つけた善逸くんに声をかけられた。
ぱあぁぁぁっと効果音がしそうな程ニコニコしている彼の元へ行く。
「怪我の具合はどう?」
「お陰様で!さっきしのぶさんに抜糸してもらった」
「良かったね」
「善逸くんは?」
「まだ手が短いままだけど、お薬飲んで日光を浴びて回復中。後遺症も残らないって」
「そっか、良かったね」
この部屋にいる炭治郎くん、善逸くん、伊之助くんの3人は任務で鬼狩りに出た先で怪我をしてここに来ている。
どういう理由かは分からないけれど、善逸くんは鬼に蜘蛛にされそうになったらしい。
聞いた時は理解できなかった。
そもそも人間が蜘蛛になるなんてあり得ない。
あり得るわけがない。と思ったけれど実際に善逸くんの手は短いし、黒っぽいアザのようなものが残っている。
そもそも鬼という存在も本来はあり得ない部類に入るのだけれど、私はこの目で見てしまったのだ。
もはや信じる、信じないではなく、その事は私の中で事実となった。
そんな鬼殺隊の3人だけれど、炭治郎くんは鬼になった妹の禰豆子ちゃんを連れているらしい。らしいと言うのも、私はまだ彼女に会ったことがない。
人を食べたことがないという彼女は今、眠り続けているんだとか。
人を食べないという特殊な状況故に、本来は狩られる筈のその存在が認められているらしい。
少し怖いけれど、どんな子か気になる。
会ってみたいな…
なんて思っていると善逸くんが「そう言えば」と話を続けた。
「明日から俺も機能回復訓練に出るんだ」
「機能回復訓練?」
「体力を元に戻すための訓練だって」
「へぇー」
「でもさ、凄く不安なんだよ。一足先に行ってる炭治郎と伊之助がげっそりして戻ってくんの」
よっぽどきつい訓練なのか…
と思っていると2人が帰って来た。
やつれたような顔でふらふらと今にも倒れそうな足取りで戻って来るなり、のろのろとベッドに入る。
「何があったの?どうしたの?ねぇ」と善逸くんが尋ねても、こちらに背を向けたまま炭治郎くんが「ごめん」と呟くだけだった。
凄く体力を使う訓練なんだ…
3人が頑張るなら私もそろそろ頑張らないと。
脳裏にあの綺麗な顔の少年が過る。
ちょっと言葉がきつかったけれど、それでも私を助けてくれた。
『霞柱の時透無一郎さんです。怪我が治ったらお礼に行くと良いですよ』
そんなしのぶさんの声が忘れられなかった。
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作者名:月見 | 作成日時:2020年9月13日 22時