46.お誘い ページ46
「長期任務になりそうだから、暫く来なくていいよ」
夕食を並べていると無一郎くんが言った。
「そうなんですか?」と聞けば「戻ったら胡蝶さんとこに文を出すから」と返事が帰ってくる。
宇髄さん達が尋ねて来てから約2週間。
『嫌われてはいないと思いますよ』と言っていたしのぶさんの言葉通り、翌日に無一郎くんのお屋敷を尋ねたらけろっとしていた。
様子も普段と変わらないので、怒っていないみたいで安心した。
まぁ、単純に忘れている可能性も有るのだけれど。
どちらにしても、嫉妬してくれていたんだとしたら、毎日通うことで少しは無一郎くんの中で私の存在が当たり前になってきているのかもしれない。
そう思うと嬉しくなる。
見回り用に握ったご飯を包んだ風呂敷を渡して「分かりました」と返事をする。
さあ、そろそろ帰ろう。と立ち上がった時、庭で鴉が鳴いた。
近付くと足に文がくくりつけられている。
「無一郎くん文が届きましたよ」
渡せば細長く畳まれたそれを彼が広げる。
けれど宛名と差出人を確認して、それをまた私に付き出した。
「え、読まないんですか?」
不思議に思って首を傾げる。
「だってこれ僕宛じゃないから」
「へ?」
予想外の言葉に戸惑いながら受け取って確かめれば、蜜璃ちゃんから私に宛てられたものだった。
運んできてくれた鴉は蜜璃ちゃんの鴉みたいだ。
がさがさと広げて中身を確認する。
「…。」
「…。」
「…何の用だった?」
他人に興味の無さそうな無一郎くんからの意外な問いかけに少し驚いたけれど答える。
「………ふふふっ。お茶のお誘いです」
笑って答えれば「そう」と短く返事が帰ってくる。
「無一郎くん、筆と紙をお借りしても?」
無一郎くんの鴉である銀子と、蜜璃ちゃんの鴉が庭で地面をつつきながら待機しているを確認して尋ねた。
「そこの棚の右から三つ目」
「ありがとうございます。お返事書いたらすぐ帰りますね!」
彼の許可を得て、筆を執ると弾んだ気持ちのまま私は筆を走らせた。
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作者名:月見 | 作成日時:2020年9月13日 22時