43.後藤さんと私 ページ43
昼を少し過ぎた頃、庭の修復作業が終わった。
「おう!悪かったな!」と声を掛けた宇髄さんに一礼してから隠の方は屋敷を去っていく。
その少し前、後藤さんと挨拶しつつ談笑していると、誰かがつんつんと私の背中をつついた。
振り返れば少しだけむっとしたような表情の無一郎くんが立っている。
「今日は早めに帰っていいから。ちゃんと胡蝶さんに診てもらいなよ」
「えっ?」
何処を?
私、怪我もしてないし、至って健康だけど?
なんて思っていると私の手を指差さす。
「火傷…赤くなってる」
言われて、今朝の台所での出来事を思い出す。
そう言えば、あの時は混乱していたから、すぐに水で冷やせなかったんだっけ…
少しヒリヒリはするものの、そこまで大したものじゃないと思っていた私は「これぐらい大丈夫だから」と笑う。
そんな私たちのやり取りを見て「あ、良かったら…」と何か言いかけた後藤さんだったけれど、無一郎くんが被せて口を開いた。
「君たちさ、喋りすぎ」
「え?」
冷たい視線を放つ無一郎くん。
ぽかんと口を開けて彼を見たけれど、彼の視線は既に後藤さんに向いている。
「アンタ、今晩も仕事あるんじゃないの?早く戻りなよ」
ビクッと反応した後藤さんは一礼するとその場を速足で去って行った。
その後ろ姿を眺める無一郎くん。
「無一郎くん、あの…怒ってます?」
「なんでそう思うの?」
恐る恐る聞けば、まだ後藤さんの後ろ姿を眺めている無一郎くんが答えた。
「私が後藤さんの邪魔したと思ってるんじゃいかって…」
「別に。でもAがそう思うのならそうなんじゃない?」
こちらを振り返ることなく答えた彼がどんな表情をしているのか私には分からなかった。
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作者名:月見 | 作成日時:2020年9月13日 22時