21.初日の失敗 ページ21
しのぶさんとの策によって、屋敷へ出入りする権限を勝ち取った私は霞柱の屋敷をくまなく巡る。
どれだけの広さがあって、どの部屋にどんなものが置いてあるか知っておくためだ。
一通り回り終わった感想としては、男の子の独り暮らしなので物が少ないということ。
あと、意外と綺麗に整理されていて驚いた。
でもやっぱり細かいところは行き届かないようで、埃っぽい部屋も多い。
蝶屋敷と比べるとそんなに広くはないけれど、そもそも一人で暮らすには十分すぎる広さと部屋の数がある。
それもこれもたぶん、弟子や継子を取った時の為や住み込みで世話をしてくれる人の為に用意されているんだろうけれど、それらがいない今の彼には必要無いものなのだろう。
空き部屋は時間のある時に掃除しよう。
そう決めて、私は居間の掃除から取り掛かった。
*****
「あ、無一郎くん」
稽古が終わったのか、汗を拭きながら廊下を歩く彼に居間から顔を覗かせて声をかける。
「まだ居たの」
「そりゃあいますよ。何と言っても、これ私なりの恩返しなので。でも、あと少し台所の片付けが終わったら帰りますね」
「ふぅん…」
「あ、あの、お口に合うか分かりませんけど、夕食作ったんで。机の上に置いてるんで!食べてください。…あと、これから夕飯は私が毎日作りますからっ!」
言いたいことを言って、私は逃げるように台所へ向かった。
自分の作ったご飯を無一郎くんが食べる。
そう思うと、やっておきながら恥ずかしくなった。
味見した感じでは良くできたと思うけれど、どうかな?なんて考え出すと止まらない。
炭治郎くんたちは「美味しい」って食べてくれてたけど…
いそいそと調理に使ったまな板や包丁を洗う。
最後に釜戸の火がちゃんと消えているか確認していると後ろから声がかけられた。
「ねぇ」
振り向くと無一郎くんが立っている。
「なんでしょう?」
「あれ何?」
「あれとは?」
「食べられないんだけど」
「え…」
早速恐れていた事態が起きたと悟った私は冷や汗をかく。
「…もしかして、お口に合いませんでした?不味かったですか?」
怖くて彼の顔が見られない。
どうしよう、どうしよう………
「ごめんなさい。私、余計なこと…」
さぁぁぁっと血の気が引いていくような感覚に陥っていると「そうじゃなくて」と頭上から声がする。
ん?そうじゃなくて?
恐る恐る顔を上げる。
「誰があんな量を食べるの」
「へっ?」
「ご飯炊きすぎ」
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作者名:月見 | 作成日時:2020年9月13日 22時