19.あの時のあの子 ページ19
朝から「ごめんください」と家主を呼ぶ声で目が覚めた。
朝からと言っても、もうすぐ昼前だけど。
昨夜から日が明ける少し前まで見回りをしてきた身からすれば、まだもう少し眠っていたい。
寝惚けた頭を起こして玄関を開ければ、女の子が一人立っている。
どこかで見たことあるような…
「…誰?」
「以前、森の中で助けて頂いたAです。ひと月前もこちらを訪ねた事があるんですけど、覚えていませんか?」
その言葉に思考を巡らせる。
覚えているような…
いないような…
「どうだっけ…?」
「じゃあ、しのぶさんから来た文のことは分かりますか?」
文と言われて、数日前に届いた内容を思い出す。
「あぁ…」
確かあれには僕が助けた子で、屋敷の身の回りのことを手伝いたいと言っている子がいるから住み込みで面倒を見てくれないか?といったような内容が書かれていた。
ずっと一人で過ごしてきたのに、今さら手伝いなんて…
“要らない”そう返事した筈だけど?
それとこれとどう関係があるのか、と考えていると話が通じたと受け取ったのか彼女が笑う。
「そう言う訳なんで、お邪魔します!」
「は…?」
何言ってんの。
「要らないって返事した筈だけど、なんで来たの?」
「最後までちゃんと読みました?」
「最後…」
そう言えばなんか書いてたな…
【良いお返事を頂けなかったとしても、そちらには伺いますから、よろしくお願いしますね】
それで来たってこと?
「もう一度聞くけど何しに来たの?」
「何しにって、この前に来たとき無一郎くんが言ってくれたんですよ?『お館様から許可が出てるから好きにすれば』って」
その言葉にぼんやりと『命を救って頂きありがとうございました』と縁側で丁寧に頭を下げていた彼女の姿が脳裏に浮かぶ。
そうだ、この子は一度森の中で助けた事がある。
「………君、あの時の泣き虫?」
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作者名:月見 | 作成日時:2020年9月13日 22時