2.助け ページ2
「…っう」
涙が込み上げてくる。
けれど、それに構っている暇はない。
恐怖で強張る体を捻って起き上がってまた走り出す。
「はぁっ…はぁっ…………っ!?」
反射的に足が止まる。
崖だ。見たところそれ程高くはない。
少しなだらかな傾斜だから、気をつければ上手く降りられそうだ。
そしてその先にはまた平らな土が広がっている。
だから降りられさえすれば、また走って逃げられる。
けれど足を滑らせて転がり落ちたら?
そのまま動けなくなってしまったら?
ごくり。と唾を飲み込む。
迷っている暇はない。
そう決心した時だった。
ガサッと背後で音がして、振り返ると先程の禍々しい気配を纏った女が私を睨み付けて立っていた。
その視線は私を捕らえて逃がさない。
あぁ、もうダメかもしれない。…ダメだ。
背を向けて崖を降りようものならその隙に捕らえられてしまうだろう。
ゆっくり後ずさる。
けれどもうこれ以上、私には下がれる足場がない。
がっ!っと女が地面を蹴って飛びかかって来た。
きっと、さっきの彼らのように私もやられてしまう!
反射的にぎゅっと目を瞑って、腕が動いて頭を守る動作に入る。
瞬間、ずるっと足が滑った。
どさっと尻餅をついてその場に崩れる。
「───霞の呼吸 肆ノ型 移流斬り」
やられる!!と思った直後、そんな声がしてぶわっとした風が体の前に滑り込んできた。
“何か”が起きた。
覚悟してきつく閉じていた目をゆっくり開くと長い髪が揺れていた。
「滅」の文字を背をった人が低い姿勢で私に背を向けて刀を構えている。
た、助かった…?
すっと立ち上がったその人がこちらを振り返った。
一瞬、女の子かと思ったけれど、凄く綺麗な顔立ちの男の子だった。
「君、大丈夫?」
彼が刀を鞘に納めながら私に問いかける。
「あ…」
安心したのか、ポロポロと目から涙がこぼれて止まらない。
「何で今泣くの?」
どこか冷めたい視線とその口調にビクッと肩が跳ねた。
初対面なのに、助けてもらったのに苦手意識を覚える。
「す、すみませ…っ、ありが───」
言いきる前に素早くガバッと抱き抱えられたかと思うと、目に止まらぬような早さでその場から飛び退く。
「…きゃ!」
恐怖で彼の服を掴んだ。
何事かと思えば、体制を立て直した彼がさっきまで私達が居た場所を睨んでいた。
「君、大人しくしといて」
「…え?」
先程の場所から距離を取って木の影に私を座らせると、彼は“何か”に飛び込んでいった。
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作者名:月見 | 作成日時:2020年9月13日 22時