記憶の中で… -Fuma，Shori-

別れの時 ページ11

それからは…最期の時が近づいている事を忘れて、普通の恋人同士のように毎日を過ごした。



風磨は『俺に「愛」を教えてくれてありがとう』って…


だから…


『私の方こそ…愛してくれて、ありがとう』


と…答えた。




そうして、毎日「ありがとう」や「愛してる」の言葉が耐えない日々が続き…私にとって、彼と過ごす時間がかけがえのない物になった。




そして…別れの日が来るというのは嘘のように元気だった彼は…時折、寝込むようになっていって…


『風磨…大丈夫？』


朝から横になったままの彼が心配になる。


『…大丈夫だよ？仕事に行って？』



『でも…』


私が居ない間に何かあったら…



『俺…Aが傍にいる時に…見守られて消えたい………だから…大丈夫、自分で、その時は分かるから…』


『絶対だよ？』



涙ぐむ私を抱き締めて『Aが帰ってくるの、待ってるから』って、辛そうに微笑んだ。





もうそろそろ…覚悟しなくてはいけないのだと分かってはいるのに、受け入れる準備が出来ないでいた。


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