合宿先にて･a ページ31
過去の自分を断ち切ろうとすれば必ず現れる過去の自分。
出戻ろうと縋る自分の手を踏みつける勇気がない。
あぁ、こんなに弱気じゃ死柄木弔は殺せないし、敵を潰すこともできない。
「大丈夫。そんなことない」
「ならいい、でいいんかなぁ」
「しかし敵との戦いの最中に思考に耽ってしまうのはあまり良いことではないな」
お茶子ちゃんの隣にいた飯田君も、やや咎めるように言う。
その通りだ。
枷は外した。決意したじゃないか。枷を今更、恋しく思ってどうする。
「改善を目指そう起弾君！！」
「飯田君といれば改善一発でいけそう」
「なっ、俺にそんな力が……！？」
きっと彼は中二病を体験したことなどないのだろう。発散型でも溜め込み型でも。
真剣に自分の持ちうる特殊能力に頭を悩ませる飯田天哉という男に、私はケラケラ笑っていた。
＊
夕飯所はやけに騒がしく、少し出遅れた私は切島君と上鳴君の謎テンションに引き攣った笑いを見せる。
本来その二人の間の席なのだが、流石に座りにくい。
離れ過ぎると先生に何か言われた時誤魔化しにくいので、同じ列の轟君の横に失礼した。
「相当お腹空いてたんだね……」
「空くだろ」轟君の声はいつもと変わらぬ平坦な声だが、おかずを取る手は休むことがない。
「空いたことより疲れが勝って、食欲が出ないよ。食べるけどさ。私ね、白米にちょっと味の強いおかずで食べるのが大好きなんだ」
「俺は味の優しいものを続けて食べる、事が多い」
目の前の口田君は無口故、あまり喋らないが美味しそうにものを食べている。
右斜め前の瀬呂君がどうやら私に気づいて、大して離れてもないのに大袈裟に手を振った。
「起弾じゃん！ なんでここいんの？」
「……あっち今更座れなくて」
「あぁ、うるせぇもんな！ これ食えよ、じゃがいものなんかだけど、すっげー美味いの！！」
ぱっぱと皿にとってハイと渡す瀬呂君。
なかなかの量である。
受け取ってしまった手前戻すのは気が引けて、食べるかと見つめていると轟君がちょっと寄越せと言って、利害の一致。
同級生との食事って、同じ苦境を乗り越えてきた友人との夕飯って、こんなに楽しいものなんだと、嬉しさを噛み締めて微笑みが漏れてしまった。
＿＿＿
更新遅くてすみません。
合宿編は相澤先生最高にかっこいいと思います。
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そら - 更新を心待ちにしております！続きが楽しみです！ (2019年1月27日 17時) (
レス) id: 1f868e4f02 (このIDを非表示/違反報告)
はっし- - 私このお話し大好きです、、、こんな素敵なお話書いてくれてありがとうございました。更新楽しみに待ってます。夢主の元カレさん大好きですねスト−リ−的にも。この話の終わりはどんな感じになるのか楽しみです。がんばってください (2017年5月1日 18時) (レス) id: 789bdf4173 (このIDを非表示/違反報告)
鍵話(プロフ) - Raia@飛竜桐乃さん» ……！！ ど、どうしてそんな人を喜ばせることが言えるんすか……！！ 素人なりに頑張ってる気ではあるんで、そう言ってもらえると報われるというか……数多に存在する小説と被らないものになるようにって、思ってて、あの、ありがとうございます、本当に嬉しい。 (2017年4月17日 20時) (レス) id: 3ea50c77cb (このIDを非表示/違反報告)
Raia@飛竜桐乃(プロフ) - 私事ですが鍵話さんの作品が本当に大好きです。ストーリーの練り込まれ方と主人公に影をつけているところが特に。すみませんそれを伝えたいだけの長文のコメントでした。私の日常に感動をありがとうございます (2017年4月16日 21時) (レス) id: 81bdde2e78 (このIDを非表示/違反報告)
鍵話(プロフ) - 柚子sherbetさん» 貴方はお母さんか何かだろうかwww (2017年3月26日 10時) (レス) id: 3ea50c77cb (このIDを非表示/違反報告)
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