テレビの前にて･a ページ29
「だからさー、怒られついでに僕は敵側にいることは完全にやめたわけ」
「……あんまり驚かないかな。トンネルで人を怖がらせるのが趣味な男には似合わないからね、あんな場所」
「言うじゃん！ ほんと、最初に会った時とは見違えるほど言葉が軽くてよく回る。ヨヅル君はもういいの？ 負の感情を呼び起こすトリガーみたいだったけど、悲劇のヒロイン飾ってただけなのかな？」
お前もよく喋るじゃないか、と思う。
細められた目に感情があるのかは知らないけれど、笑顔だとは思えない。
「ねぇ、君の友達を思う気持ちはそんなものだったの？」
そうかもしれない、と言ってしまいそうになる。
でもその言葉が口をつこうとすると、違うよ、と別の誰かが声をかける。
誰なのか、それは私なのか。それとも記憶の中の誰かなのか。
判然としないけれど、すとんと胸に落ちる。
大切か。必要か。友達ってなんだ。
違うよ、君はその答えをまだ出さなくていい。
「世蔓は、私を許してた。私も私を、少しは許せてた。咎めようなんてしてなかったのに、私は自分に枷をつけて、それが生きがいだとすら思った。枷がなかったら、そのまま堕ちる気がした」
檻に入れられるような枷じゃない。
上から吊り下げられて、遠くに地面があって、青空は下にあって、風が殴ってくるような。
「けど、枷の存在も知らない人たちが手を差し伸べてくれた。知らないくせに、なんて思わなかったよ。知らないことが心地よかった。初めて、いや、改めてなのかな、友だちってのを知った」
「雄英の子、か」
「彼らだけじゃないよ。私はさ、ただの餓鬼だったんだ。それも、きっと皆よりずっと遅い人生のスタート。雄英に来て、私は生まれ変わってる」
だから、と言って私は伝脳の目を見る。
ぱっちりしない瞳の奥の方に、語りかける。
「もう皆を傷つけさせたりしない。私が痛い目みようと、もう二度と、眼下の空を感じることなんてないように」
ヒーローになりたいのか、いいや違うね。
ヒーローになろうとする皆が好きだから、そこに居たいと思うんだ。
伝脳はじっと私を見てから、目を細めた。
狐みたい。人を化かす。
「そう。罪を受けないために悪事を働かない。怒られたくないから決まりを破らない。それは間違ってないよ。けれど、敵ってのはその決まりを壊すために破るんだ」
抑揚のない声。
「敵はアンタを狙ってる。取り込みたくて仕方がない。逃げな、枷をつけようとする闇から」
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そら - 更新を心待ちにしております！続きが楽しみです！ (2019年1月27日 17時) (
レス) id: 1f868e4f02 (このIDを非表示/違反報告)
はっし- - 私このお話し大好きです、、、こんな素敵なお話書いてくれてありがとうございました。更新楽しみに待ってます。夢主の元カレさん大好きですねスト−リ−的にも。この話の終わりはどんな感じになるのか楽しみです。がんばってください (2017年5月1日 18時) (レス) id: 789bdf4173 (このIDを非表示/違反報告)
鍵話(プロフ) - Raia@飛竜桐乃さん» ……！！ ど、どうしてそんな人を喜ばせることが言えるんすか……！！ 素人なりに頑張ってる気ではあるんで、そう言ってもらえると報われるというか……数多に存在する小説と被らないものになるようにって、思ってて、あの、ありがとうございます、本当に嬉しい。 (2017年4月17日 20時) (レス) id: 3ea50c77cb (このIDを非表示/違反報告)
Raia@飛竜桐乃(プロフ) - 私事ですが鍵話さんの作品が本当に大好きです。ストーリーの練り込まれ方と主人公に影をつけているところが特に。すみませんそれを伝えたいだけの長文のコメントでした。私の日常に感動をありがとうございます (2017年4月16日 21時) (レス) id: 81bdde2e78 (このIDを非表示/違反報告)
鍵話(プロフ) - 柚子sherbetさん» 貴方はお母さんか何かだろうかwww (2017年3月26日 10時) (レス) id: 3ea50c77cb (このIDを非表示/違反報告)
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