隣の席の子は女の子じゃなかった件について-3 (ページ27)

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「＿＿＿っん、椿？」

泣きじゃくる弟の声に意識が覚醒した菫は自分が縛られている事に気付く

「あ、菫君起きた？ごめんね？手痛いけど我慢してね？」

「…オジサン、誰？」

「オジサンだなんて酷いなぁ～、【パパ】っだろ？」

「…は？」

何を言っているんだコイツと、目の前で弟の椿をあやす男に気持ち悪さを覚える

「俺達はね、もう少ししたら【家族】になるんだ、君の前のお父さん程の収入はないから苦労させるかもしれないけど、絶対に幸せにする自信はあるから安心して？」

「なに、言って」

「例え君達にアイツの血が流れていようと俺はちゃんといいパパになるから何も心配することはないよ」

「っ！？」

薄暗くて全ては見えてはいなかったが、壁一面に張られた写真を見て菫はあまりの恐怖に言葉を失う

「大丈夫、怖がらないで？」

固まる菫を見て何を勘違いしたのか、恍惚とした表情で菫の頭を優しく撫でた

「もう少しの我慢だよ、もう少ししたら君のママの所にいけるから、4人で幸せに暮らそうね」

「・・・るな」

「ん？どうしたのかな？」

「汚ねぇ手で俺と椿に触るなってんだよクソ野郎ッ＿＿＿」

響く乾いた音とジンジンと痛む頬、兄の怒号に更に椿は鳴き声を上げる

「…ごめんね、でも今のは君が悪いんだ…躾も親の仕事だからね、言っただろ？俺は良いパパになるって」

「っ」

冷たく見下ろす目に子供ながらにこれ以上は逆らったら殺されると分かった

「ごめ、なさっ」

「うん、ちゃんと謝れて偉いね？流石Aちゃんの子だ」

恐怖に支配されてどれくらいの時間が経っただろうか、未だに泣き止まない椿にだんだんと男は焦りで苛立っていた

「何で泣き止まないんだっ？俺がまだパパじゃないから？」

「…多分だけど…オムツとお腹が空いたんだと、思う…」

「あぁっ言われてみればちょっと匂いがするねっ」

ごめんごめんと、いつの間に用意していたのか
棚からオムツやオシリ拭きを取り出すと手慣れたように椿の下の処理を始めるではないか

「ふふっ、吃驚した？これでも一応パパになるからね、講習会で練習したんだ」

「…あっそ」

「後はご飯だよね、ちょっとミルク作ってくるから椿くん見ててくれるかな？」

そう言って拘束されていた手足が簡単に外される

「えっ」

「菫君はいい子だから【逃げる】なんてしないよね？」

「っ…」

細められた瞳、恐怖に支配された今、菫に【逃げる】なんて選択肢は浮かばなかった