隣の席の子は女の子じゃなかった件について-3 (ページ26)

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「約１０年前…【西田】って男の事覚えてっか？」

「西田ァ…？」

思い出せない蘭とは裏腹に九井は「まさか…」と口にする

「九井なんか覚えてんの？」

「…こいつがまだ梵天に入って少ししたくらいの頃だ、イザナに頼まれたリストの整理をしてる時に『西田って男知ってますか？』なんて突然聞かれたよ…
当時はまだその時の事を覚えてたし、組織の人間だからって思って話をしたが＿＿＿」

九井が説明をすると、下からクツクツと笑い声があがり、どうやら秘書の男が意識を取り戻し蘭の胸倉を力なく掴む

「忘れたなんて言わせねぇぞ…約１０年前、お前は藤森って男をとある廃墟に呼び出した、その時一緒についていた男だよっ！」

「…あぁ、お土産君ね」

「っ！」

悪びれることなく思い出した蘭の頬を秘書の男は力いっぱいに殴る

「ってぇな…でもお前、西田と何の関係があんだよ？」

「西田…西田智明は俺の兄貴の名前だっ！」

「兄貴？でもお前って確か…森田光彦じゃなかったか？」

「あぁ…西田は母方の旧姓だからなっ…あの頃は両親が離婚して兄貴を引き取ったのが母親で、親父は俺を引き取った…両親は険悪だったが、兄貴は俺の事を心配してよく様子を見に来てくれてた…っ
でもある日、突然母からきた兄貴の訃報…事件に巻き込まれて遺体すら残らなかったって！信じられると思うか！？」

ひたすらにがなる森田の瞳は三途が言う通り、復讐の色に染まっていた

「そんな都合よく遺体が残らないわけねぇだろ！？だから俺はしつこく何度も警察の人に聞きまわったが誰も相手にしてくれなくてっ、諦めかけた時だ…
兄貴と同期だった奴が俺の前に現れてお前達灰谷兄弟が関係しているかもしれないってこっそり教えてくれたんだよ」

「ふーん、それで九井の言葉で確信を得たと？」

「あぁ…のうのうと生きてるお前が毎日憎たらしかったっ、いつでも殺せる機会は確かにあったが…お前にガキが出来たと聞いた時、そうだ…どうせならコイツの大事なものをぶっ壊しやろうって」

ぐっと森田は蘭の顔に手を伸ばして引き寄せると、狂気じみた表情で覗き込む

「偶然にもお前を消してやりたいって奴と出会ったとき、神が俺に救いの手を伸ばしてくれたとさえ思った！だから利用してやったんだ！高橋って男をな！」

高らかに笑う森田に蘭は無言で頭突きを喰らわせ、馬乗りになって何度も殴りつける
竜胆によって漸く止められた頃には、森田の顔は原形すら残っていなかった