文書071-3-3 ページ9
「こんにちは、カインさん。ご機嫌いかがですか?」
支部内の人間が創作した後日談の報告をして以来でしょうか。
カインさんは金髪碧眼の一般人と相違ない外見をしていますが、中身はただの優しい人間です。
彼は被創造物ですので人々の認識によって多少左右されることはありますが、最初の殺人犯以外でしたらなにも悪くありません。
人殺しでしたら物語にごまんといますので、そんなものは些細なことでしかないでしょう?
「やぁ。…誰だい?新入りの職員ではないだろう?」
ガラス越しに手をつき、いぶかしんで首をかしげながら私にきいてきました。
「ダンタリオンです」
「…僕の知っているダンタリオンは銀髪に黒い瞳を持った青年期の男性なのだけれど」
彼は更に眉をしかめて不審者を見る目で私の顔を眺めます。
こう何度も誰かの理想になり続けていますと、このように懐疑を持たれることや
感極まって泣かれる方、酷いときには襲ってくる方もいますのであまり良くありません。
支部全体に注意が行き届いていないときには何度襲いかかられ都度壊したことでしょうか。
あまり考えたくないのが本音です。
「お忘れでしょうか?私、何度も姿を変えているでしょう?」
物分かりの悪い彼に何度かしていた説明をもう一度冷たい目を添えてします。
些か目立ちにくい創世記によった異常生物ですとこうも認識に偏りが生じてしまうのですね。
流石楽観主義の多い遊牧民、といったところです。
非常に不愉快ではありますが、それを口に出してしまうと
勢い余って練りに練られた計画によって刺殺されてしまいますので閉口します。
「ああ、そういえばそうだったね。で、ダンタリオン。いったい何の用かな?…前の後日談なら聞きたくない」
カインさんが深く頷いたかと思えば苦笑しながら質問してきます。
後日談、というのは彼にとって一種のトラウマに近い存在なのでしょう。
数か月前に職員によって描かれた物語。
ここでの言及は避けさせていただきますが、それはそれはもう不出来で良く見る物語でした。
こう言ってしまってはあれですが、対話体小説とも台本書きとも相応しくないメアリー・スー染みたものでした。
過酷な労働環境下におかれては異常生物とガヤガヤ騒ぐ物を空想しても良いのですが、図に乗るのはまた違います。
度しがたいものでした、あれは。
「ダンタリオン。用件は?」
「失礼、物思いに耽っていました。…手短にしましょうか」
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菫青(プロフ) - 紫清さん» まず、この世界観に惚れてくれたことが作品の親として本望でした。彼女の在り方や文章は私の好みも含んでいたのですが刺さったということで大変嬉しい限りです。こちらこそコメント、ありがとうございました。 (2019年10月19日 20時) (レス) id: 62f559e9d8 (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - 急にコメント失礼します、偶然この作品を読ませて頂いたのですが、謎の多く少し不気味な世界観とそれを反映した文章、そしてダンタリオンさんの在り方に惚れました……! これからも陰ながら更新楽しみにしております。素敵な作品、本当にありがとうございます。 (2019年10月19日 20時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)
菫青(プロフ) - シャル@如月唯奈さん» 私個人の趣味を大きく詰め込んだ設定、文章でしたが読みやすいようで何よりでした。こちらこそ参加させていただきありがとうございます。 (2019年9月25日 20時) (レス) id: 62f559e9d8 (このIDを非表示/違反報告)
シャル@如月唯奈(プロフ) - イベント参加ありがとうございます!早速読ませていただきました。文章も好みでとても読みやすかったです(^-^)この作品の設定もイイ(笑)更新頑張ってください! (2019年9月24日 22時) (レス) id: 0214723abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菫青 | 作成日時:2019年9月21日 21時