文書071-4-3 ページ21
｢因果応報というべきでしょうか、ここで彼らの物語は終わってしまいました。
…末路が知りたいでしょう？彼らが悪魔と糾弾した者が本当の悪魔と化し、
村民をひとりひとり殺して疑心暗鬼に陥らせて狼のいない人狼ゲームとします。
村の誇る寓話のような景観は真っ赤に染まり上がり、
村人同士が互いを悪魔と呼ぶ大変面白…ではなく、大変悲惨な事件を迎えて幕を閉じています｣
話を終えると職員は驚いた顔で硬直し、私の顔と自身のワインをしきりに見比べています。
あぁ、そういえばワインにはチーズが必要でした。
複製品でよければと思い、水牛の牛乳にて作られたチーズを箱ごと取り出して開け、彼の前に置きます。
出産地は…もう掠れて読むことができませんね。
｢これは…｣
｢よければどうぞ。腐敗はしていませんなでご安心を｣
まぁ、私はこんなもの好みではないので嫌いですし食べたくないのですけれど。
職員が口にし、美味しさ半分苦味半分の顔をします。
このチーズはよく熟成はしていますから味のクセが強いことを伝え忘れていました。
｢…ではもうそろそろ時刻でしょうか｣
ソースは私の体内時計です、証明することは不可能ですけれど。
｢ありがとうございました｣
職員がその言葉を告げ、立ち上がります。
帰って置いていかれ、一人ぼっちというのはやはり悲しいことですね。
｢こちらこそ。それと、そのワインとチーズは実に甘美でしたでしょう？｣
｢…はい。病みつきになるような、そんな中毒性の高いものでした｣
あのワインとチーズは無味無臭ですから、私にとっては液体と固い何か程度の認識ですがヒトにとっては甘美らしいです。
在庫処理、ありがとうございますと言いたいですが口をつぐみました。
｢その怨恨の聲(ワイン)と憎悪の塊(チーズ)が食べたくなったのなら、また来てくださいね｣
お気づきでしょうね。
怨恨の聲こそ酒場の話題に相応しく、憎悪の塊こそ酒の肴に相応しい。
あの村の恨みつらみ、相手への疑念と憎悪の概念を結晶化及び液体化させることこそが最高のモノに相応しいのですから。
｢はい｣
虚ろな目で職員は頷き、部屋を出ていきます。
許可さえ降りれば誰でも来訪できる最低ランクだからこそ、こうして泥沼に嵌まっていく人間も増えていきますね。
そういえばあのワインの銘柄を伝えていませんでした。
『シャルドネ』
それこそが、あのワインの銘柄です。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
菫青(プロフ) - 紫清さん» まず、この世界観に惚れてくれたことが作品の親として本望でした。彼女の在り方や文章は私の好みも含んでいたのですが刺さったということで大変嬉しい限りです。こちらこそコメント、ありがとうございました。 (2019年10月19日 20時) (
レス) id: 62f559e9d8 (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - 急にコメント失礼します、偶然この作品を読ませて頂いたのですが、謎の多く少し不気味な世界観とそれを反映した文章、そしてダンタリオンさんの在り方に惚れました……！ これからも陰ながら更新楽しみにしております。素敵な作品、本当にありがとうございます。 (2019年10月19日 20時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)
菫青(プロフ) - シャル＠如月唯奈さん» 私個人の趣味を大きく詰め込んだ設定、文章でしたが読みやすいようで何よりでした。こちらこそ参加させていただきありがとうございます。 (2019年9月25日 20時) (レス) id: 62f559e9d8 (このIDを非表示/違反報告)
シャル＠如月唯奈(プロフ) - イベント参加ありがとうございます！早速読ませていただきました。文章も好みでとても読みやすかったです(^-^)この作品の設定もイイ(笑)更新頑張ってください！ (2019年9月24日 22時) (レス) id: 0214723abe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：菫青 | 作成日時：2019年9月21日 21時
