文書071-4-2 ページ20
その村は、非常に栄えていました。
風車がたくさんあり、丘に登れば花が咲き乱れ、川にいけば水車と小屋を見られます。
みんなで村をもっともっと賑やかにしよう。
村人は固い絆で結ばれています。
彼らは白葡萄に目をつけ、それらを絞った果汁を利用したワインを売って儲けることを考え、そして実行しました。
いつの世も酒というのは需要があり、そして貴重になれば値をつり上げ、
普遍的なものになればブランド品として売り出すことで村は常にお金でいっぱいです。
やがて村は国中に名を轟かせるほど有名な観光地となりました。
「みんな、人がいっぱい来てるよ!」
村人は客人を丁寧にもてなし、その評判がまた新たな人を呼びました。
ある人間は宿屋を作って泊まることができるようにしました。
ある人間は酒場を作って交流と質が悪くなってしまったワインを嗜めるようにしました。
村は客と村民でいっぱいになり、いつしか人が増えていき、大きな大きな村になりました。
次第に観光客が増えると同時に、儲けは誰かに偏っていきました。
ワインを作ったら農家と水車の人間に、観光客が来たら宿屋と酒場の人間へと
利益が持っていかれ、素直に狩りや農耕をしていた人は損ばかりをするようになっていきました。
農家は調子に乗り、自分以外の人間が葡萄を作ると家を買い取るようにすると言いました。
水車の人間は苛立ち、ワイン製法を秘密にして自分以外がワインを作れないようにしました。
このままではいけない。
そう考えた村人たちは抗議をしますが、彼らは聞く耳を持ちません。
村人たちは考えます。
どうすれば僕らにも利益が回るのだろう。
どうすれば独占させないようにできるのだろう。
すると、ある村人が言いました。
「農家の果樹園を焼き払おう」
村人たちは頷きました。
家を買われる前に焼いてしまおうという考えに反対するものはいませんでした。
ある村人は言いました。
「白葡萄の農家を呪おう、村八分にしよう」
村人は頷きました。
独占する悪い人間はこの村にはいらない、村の結束を強めるためにも悪が必要だから彼らを呪って悪にしよう。
そうしよう、そうしようと口々に言いました。
果樹園は焼き払われ、農家は居場所もお金もなくしました。
水車の人間は村八分にされ、代々銀髪の子供しか生まれなくなりました。
村人たちは今、幸せです。
観光客もお金もないです。
でもみんなが仲良く、協力して、末永く暮らしました。
おしまい。
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菫青(プロフ) - 紫清さん» まず、この世界観に惚れてくれたことが作品の親として本望でした。彼女の在り方や文章は私の好みも含んでいたのですが刺さったということで大変嬉しい限りです。こちらこそコメント、ありがとうございました。 (2019年10月19日 20時) (レス) id: 62f559e9d8 (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - 急にコメント失礼します、偶然この作品を読ませて頂いたのですが、謎の多く少し不気味な世界観とそれを反映した文章、そしてダンタリオンさんの在り方に惚れました……! これからも陰ながら更新楽しみにしております。素敵な作品、本当にありがとうございます。 (2019年10月19日 20時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)
菫青(プロフ) - シャル@如月唯奈さん» 私個人の趣味を大きく詰め込んだ設定、文章でしたが読みやすいようで何よりでした。こちらこそ参加させていただきありがとうございます。 (2019年9月25日 20時) (レス) id: 62f559e9d8 (このIDを非表示/違反報告)
シャル@如月唯奈(プロフ) - イベント参加ありがとうございます!早速読ませていただきました。文章も好みでとても読みやすかったです(^-^)この作品の設定もイイ(笑)更新頑張ってください! (2019年9月24日 22時) (レス) id: 0214723abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菫青 | 作成日時:2019年9月21日 21時