文書071-3-5 ページ12
『O-005、C区画に移動中です。支部長、どうか適格な判断を！』
一人の職員が連絡機を持ち出して煩わしいほどにうるさく叫び、たいへん無駄なことにこの場から逃げ出そうとします。
O-005-1、その名をゴーストタウン。
その場所こそは永久に雨の降り続ける街。
プルトーネが創った霊園があるのですが、これがまた悪趣味かつ生産性の一切無いものですし、
なにより自己中心的な思考をしているために自分が絶対善だと思い込んでいるのです。
支部長の判断が鈍れば私を含めない人間の全滅は確定でしょう。
『…事務員の川崎をT-071-1の元へ』
困惑しながら井戸端会議のように与太話を続けていた二人の喋り声止まりました。
ポニーテールの黒髪の娘と、ハーフアップツインの銀髪の娘がおり、前者が川崎事務員、後者がエージェント・シャルドネです。
『わかりました』
『事務員の川崎、大至急c区画まで来い。支部長直々の指令だ』
横の人間の動揺に目もくれず、連絡網を駆使して探しています。
そうでしょう。
自ら死ににいく人間なんてそうそういないですし、こんな場所であっても命は大事にしたいでしょうから。
｢アノ〜｣
エージェント・シャルドネが彼等の会話に口を挟み、声色自体はおずおずとしているものの清々しいほどの笑顔で言います。
川崎は彼女の言おうとしたことを察し、目を見開いて親でも殺されたかのような、
または自分を殺そうとする殺人者のように恨みを込めて見つめていました。
失礼、自分を殺す殺人者であり密告者でもあるようなものでしょうか。
魔女裁判の被告人である気分でしょうけれど、運命は貴女を選びましたからセイラムの魔女裁判よりも醜い光景です。
｢つまりはーこのヒトがー｣
｢この人が川崎です！｣
川崎がシャルドネを指差し、彼女ののんびりとした報告を遮って大きな声で叫びました。
あぁ、終身刑が確定してしまった身で上告するあわれな罪人のようですね。
とても醜いにも関わらず、人間的には完璧に美しく汚らわしい魂に生存欲求刻まれていますね。
きっと仮面になればさぞ美しい(汚ならしい)のでしょう。
｢ハイ！？｣
｢…ダンタリオン｣
シャルドネが唖然とした顔で叫び、側の職員は彼女が川崎だと断定したのか私の名を呼びます。
｢ええ、はい｣
私は喜んで歩きだします。
驚くシャルドネを通りすぎ、一人安堵していた川崎の目の前に行きます。
｢確か日本では戴くときに礼節を尊ぶのでしょう？…いただきます、とね｣
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菫青(プロフ) - 紫清さん» まず、この世界観に惚れてくれたことが作品の親として本望でした。彼女の在り方や文章は私の好みも含んでいたのですが刺さったということで大変嬉しい限りです。こちらこそコメント、ありがとうございました。 (2019年10月19日 20時) (
レス) id: 62f559e9d8 (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - 急にコメント失礼します、偶然この作品を読ませて頂いたのですが、謎の多く少し不気味な世界観とそれを反映した文章、そしてダンタリオンさんの在り方に惚れました……！ これからも陰ながら更新楽しみにしております。素敵な作品、本当にありがとうございます。 (2019年10月19日 20時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)
菫青(プロフ) - シャル＠如月唯奈さん» 私個人の趣味を大きく詰め込んだ設定、文章でしたが読みやすいようで何よりでした。こちらこそ参加させていただきありがとうございます。 (2019年9月25日 20時) (レス) id: 62f559e9d8 (このIDを非表示/違反報告)
シャル＠如月唯奈(プロフ) - イベント参加ありがとうございます！早速読ませていただきました。文章も好みでとても読みやすかったです(^-^)この作品の設定もイイ(笑)更新頑張ってください！ (2019年9月24日 22時) (レス) id: 0214723abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菫青 | 作成日時：2019年9月21日 21時
