1. jackson side ページ1
Jackson side
車のゆれに身をまかせ、窓の外をぼーっと眺める。
速度に合わせて忙しく流れていく景色は、もう夜も深いというのにキラキラと輝いていた。
まだ働いている人がいるのか、ご苦労なこった。
つい先ほど仕事を終え帰宅中である俺は、その明かりに小さな優越感を覚えた。
今日はいつもより早くスケジュールが終わったから、なおさら気分が良かった。
日付が変わる前に帰れるなんていつぶりだよ。
記憶の引き出しを開けてみたが、仕事終わりの疲れ切った頭では思い出せそうにない。
それくらい久しぶりなのだ。
日々の帰宅時間がこれなのだから、一日オフなんて幻だったんじゃないかレベル。
芸能界という何が起きるかわからない世界。
デビューしてからというもの、俺もメンバーも必死だった。
その結果、世間に実力を認めてもらえた俺たちには、様々な仕事のオファーが舞い込んでくるようになった。
テレビ番組、CM、雑誌、イベント、そしてカムバックの準備。
日々が目まぐるしいスピードで過ぎ去っていった。
他のメンバーと比べてソロの仕事が多い俺は、今日もソロの仕事を終えて一人で車に乗っている。
いつもは賑やかで誰かしらの話し声が聞こえてくるのに、静まり返った車内。
ありがたいことに、ソロの仕事は少なくない。
最初はみんなが居ない状況に緊張や寂しさが付いて回ったが、数をこなせば人は慣れる。
眩暈がしそうな仕事量。
でも、疲れた、なんて言っちゃいけないような気がした。
憧れていた世界で仕事をもらえて、認めてもらえているのだから。
好きなことを仕事にできる人間なんてこの世に何人いるのだろう。
初心。
バラエティ番組でいじられたときに言われた言葉だけど、たまに教訓のように唱える。
忙しい日々を過ごしていく中で自分を見失いそうになるから。
車の窓に反射した自分と目が合う。
最近染め直した金色の髪。濃い隈のある瞼。少し荒れた肌。
頰の肉が心持ち減った気がする。
ヒデェ顔。
心が次第に暗く沈んでいくのを感じた。
意識をまた窓の外に戻すと、見知った景色が見えてきた。
もうすぐ宿舎だ。
暗い気持ちにはまり込んでいた自分が引き戻される。
腹減ったなぁ。何か買って帰ろ。
「マネヒョン!コンビニ寄って!」
「おお、いいぞ。ついでに俺にもコーヒー買ってきてくれ」
「OK!」
外に出るために、顎にかけていたマスクを引き上げ、サングラスを掛けて帽子を深く被りなおした。
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ソル(プロフ) - 凄く面白いです!更新楽しみにしてます! (2017年5月29日 18時) (レス) id: ed08a08e21 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - 表現の仕方がすきです。更新待ってます (2017年5月8日 0時) (レス) id: 40f03127af (このIDを非表示/違反報告)
雨ノ宮心音(プロフ) - 実在する人物なので、オリジナルフラグを外した方がいいですよ!違反報告されます。 (2017年5月7日 22時) (携帯から) (レス) id: 665a044116 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きのさん | 作成日時:2017年4月4日 22時