小さい頃の好奇心 ページ9
.
衝撃の事実だった。
「え……嘘でしょ」
「いや、ほんとに」
真剣な表情で私の目を見つめる川村くんの姿に、何十年越しの不安が襲いかかる。
毒っていつまで残るんだろう。
反射的にお腹を抑えた私を見て、川村くんは堪えられないと言わんばかりにケラケラと笑いだした。
「……くくっ、顔真っ青じゃん」
あ、もしかしてこれは
「…………騙したの？」
なんですぐ信じてしまったのか、恥ずかしくなってわざとらしく怒った素振りをしてしまう。
「嘘だよ、いや、嘘ではないけど」
「ええ……もう、どっちなの」
川村くんはひととおり笑って、それからツツジを人差し指でつつきながら口を開いた。
「ピンクは毒ねーけど、赤いのにはあるらしい」
「……へぇ、赤いツツジなんてあるんだ」
「俺も見たことないけどな」
川村くんはそれだけ言って急に立ち上がったかと思えば、花壇と私の間にしゃがみ直して
「ごめんな、騙して」
私の顔を覗き込みながら申し訳なさそうに、でも少し楽しそうに笑った。
「……別に、怒ってないよ」
急に近づいた距離に、顔に、思わず頬が熱くなるのが分かって、今度は私が急に立ち上がった。
とにかく川村くんは、距離感がおかしい。
「ほんとに？」
川村くんは下から上目遣い気味に見上げてくる。
見た目とは裏腹な子犬のような目に思わず可愛いと思ってしまう。
…………これのどこが “帝王” なのか。
早急に沙苗に問いただしたい。
「ほ、ほんとに怒ってない！」
恥ずかしさを紛らわすように、話をまたツツジに無理矢理戻す。
「でも、小さい頃は毒とか考えもしなかったよね」
「だよな、なんも考えてなかった」
こえーな、って川村くんが笑ったのにつられて
そうだね、って私も頬を緩めた。
本当に、なんで小さい頃ってなにも恐れずに行動できたんだろう。
いつから色んなことが怖くなったんだろう。
「今じゃもう、怖くて無理だなぁ」
「…………え？」
「あの頃の勇気って、いつ消えたんだろうね？」
ふと、ポツリと、独り言のように言葉が零れた。
そう、あの頃とは違う。
『アイツ全然■■くんに釣り合わないじゃん』
関係ないあの子の顔がまた、思い浮かぶ。
だから、川村くんと仲良くなることが何を意味するのか、分かってしまうのだ。
「…………」
ツツジの話の流れとしては少々重苦しい空気に変えてしまったことに気がついてハッとする。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 993人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「THERAMPAGE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しおり(プロフ) - このお話とってもすきです！続きも楽しみにしています！ (2020年2月9日 20時) (
レス) id: f2d61f7afd (このIDを非表示/違反報告)
kino.(プロフ) - さくさん» コメントありがとうございます(><)！そんな風に受け取っていただけて嬉しいです（ ; ; ）いつものろのろとお待たせしてしまって申し訳ないのですが、これからも見ていただけますと嬉しいです（ ; ; ） (2020年1月5日 14時) (レス) id: ee69af6f8c (このIDを非表示/違反報告)
さく(プロフ) - はじめまして！壱馬くんと主人公ちゃんのやり取りが可愛すぎます！この作品大好きです！更新大変だと思いますが、陰ながら応援しています！失礼しました！ (2020年1月5日 8時) (レス) id: 67f82f89a4 (このIDを非表示/違反報告)
kino.(プロフ) - も。さん» コメントありがとうございます！そんなふうに言っていただけて凄く嬉しいです（ ; ; ）とてもお待たせしてしまうと思いますが、更新頑張りますのでお時間あります時に覗きにきていただけると幸いです。温かいお言葉にお応えできるように頑張ります(^^) (2020年1月5日 0時) (レス) id: ee69af6f8c (このIDを非表示/違反報告)
も。(プロフ) - 初めまして！大学生の設定ですがアーティスト本人の性格がとんでもなくそのまま出ていて、大学生らしい展開にいつも悶えながら読ませてもらっています！無理せずにご自身のペースで更新頑張ってください！本当に大好きなお話で沢山読み返させて頂きます！ (2020年1月4日 22時) (レス) id: db66c21382 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kino. | 作成日時：2019年12月13日 21時
