You're my crush. - 川村壱馬 -

3年目の油断、それから ページ2

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何故こんなにも月曜日の朝は憂鬱なんだろうか。


ただでさえ朝は弱いのに。



「うーん……………」



春の窓際はポカポカしていて気持ち良い。
寝ていいよ、とお日様に言われているようだ。


私の定位置は窓際後ろから3列目。

ちょうど窓の横
ここが1番、心地良い席だと思う。


大学3年生になって早1ヶ月。

知らず知らずのうちにもう5月に突入していた。



「え〜この土日にはね…………」



何故かこの授業の先生は、毎回週末に何をしたかを私たちに細かく報告してくれる。


その話を聞きながら私たちは回されるカードリーダーに学生証をかざしていく。


大学にもよるみたいだけど、うちの出欠用のカードリーダーは固定ではなく携帯型だ。


ピッ、ピッ 、ピッ

無機質な機械音が教室内に響く。


私は毎週この時間に耐えられない。


大体一定のリズムで鳴る小さな機械音
大きくも小さくもない先生の声


まさに眠気を誘う塊でしかない。



「それでですね〜…………」



大きな教室、右前から順に回されるカードリーダーが私に回ってくるのには時間がかかる。


それこそ、先生が話し終わるあたりまで。



頬杖をつき、耐えきれずに目を閉じる。



少しだけ


少しだけ…………



朝が弱すぎる私の救世主は1年生から一緒に授業を受けている大の仲良しの “沙苗” だ。



『A、カードリーダー回ってきたよ』



そう言って、右側に座る沙苗はいつも肩を叩いて私を起こしてくれる。

この5分間の睡眠と沙苗のおかげで私は毎週月曜1限を乗り越えられている。



そう、いつもなら、そうだったのだ。



「……………あの」

「…………」

「あのー………………」



この日は何かが違っていた。


いつものようにトントンと肩に手が触れる。


もう回ってきたのかな？


だけど、そのことに私は違和感を覚えた。
叩かれたのは右ではなく、左肩。


右を見るといつも座っているはずの沙苗がいない。



「( あれ……？ )」



違和感を感じて数秒、慌てて後ろを振り返る。



「……回ってきてますよ、それ」



私が急に振り向いたことに驚いたのか、後ろの席の男の子は一瞬目を丸くして、その後カードリーダーを指さしながら目を逸らした。



「あ……すみません！」

「………いえいえ」



私を起こしてくれた男の子は鬱陶しい顔1つせず私にふわりと微笑んだ。



恥ずかしすぎて、顔が熱くなる。



何かが変わりそうな、5月の始め。

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